研究課題
昨年度に引き続いて、広義拡散過程列の極限過程として生じる双一般化拡散過程に対し、Ogura(1989)の理論に基づく標本路の具体的な表現を用いて、極限過程の様相について考察した。本研究を開始した当初は、標本路の挙動が特異な点についても、何らかの位相構造があると予想し、研究を推進した。しかし、Iizuka and Ogura(1991)で取り扱われた集団遺伝学の拡散モデルに対して、そこでは取り扱われなかった極限について解析を行ったところ、状態空間が位相構造をもたないような極限過程(定常型と飛躍型が混在する確率過程)が出現した。これは、双一般化拡散過程の状態空間に対して位相構造と呼ぶ概念(右通過点、左通過点、罠、正則点の分類)の導入ではなく、極限過程の分布に基づく双一般化拡散過程の再考察の必要性を示している。この研究結果は、国際シンポジウムの招待講演で報告した。広義拡散過程は正値連続加法的汎関数を用いてブラウン運動の時間変更と尺度の変更により得られる。更に、正値連続加法的汎関数の列と尺度の列を考察することにより、双一般化拡散過程が得られる。時間変更は正値連続加法的汎関数の逆写像により定義される。この観点から、正値連続加法的汎関数を定義する拡散過程の局所時間の逆写像に関する研究を平成25年度から開始し、昨年度は、必ずしも再帰的とは限らない拡散過程に対して尺度と速度測度関数の漸近挙動が局所時間の逆写像に及ぼす影響(漸近関係)について考察し、研究結果を論文にまとめた。本年度は、非再帰拡散過程に対し局所時間の逆写像のレヴィ過程表現に現れる特性量について考察し、研究論文として発表した。更に、集団遺伝学における確率モデル(間接的な相互作用を伴う互助的中立突然変異モデル)を記述する多次元マルコフ連鎖とその拡散近似(拡散過程)の境界点への初期到達時間に関する解析を行い、研究論文として発表した。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Ann. Reports of Graduate School of Humanities and Sciences, Nara Women’s University
巻: 31 ページ: 127-138
Journal of Theoretical Biology
巻: 388 ページ: 96-107
10.1016/j.jtbi.2015.10.008