研究課題/領域番号 |
25400150
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
長井 英生 関西大学, システム理工学部, 教授 (70110848)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ダウンサイドリスク最小化 / モデルの不確かさ / エルゴード型 H-J-B 方程式 / 大偏差確率 / 双対型定理 / 最適消費・投資問題 |
研究実績の概要 |
市場の数理モデル、特に非完備な市場の数理モデルとしてしばしば考察されるファクターモデルについて、モデルの不確かさを容認した設定の下でダウンサイドリスク最小化問題を考察した。問題の定式化にあたって、対数効用最大化問題を資産成長率最大化問題と捉え、不確かさによる処罰項として、相対エントロピーを付加することにより、モデルの不確かさを容認した資産成長率最大化問題を定式化した。そして、その問題の risk-sensitive control version を定式化し、対応する H-J-B 方程式の解析を行った。また考えるべきダウンサイドリスク最小化に関する大偏差確率の評価はこの問題の双対問題と捉えられると考え、必要な解析を行った。すなわち、エルゴード型 H-J-B 方程式の導出、そのリスクパラメータに関する微分の解析と、問題となっている大偏差確率の評価である。その結果、モデルの不確かさを考慮に入れない場合と類似した双対型定理を得ることが出来た。そして、付加した相対エントロピーに乗じた定数の逆数が不確かさの程度を表すことを、エルゴード型 H-J-B 方程式の解の評価から示す事が出来た。 一方、無限時間範囲で最適消費・投資問題のH-J-B 方程式の解の存在と一意性、及び強検証定理を示した。 ここでは、許容戦略のクラスを H-J-B 方程式の解を用いて定義したため、その解の一意性が問題となるが、リスク回避的な場合とリスク志向的な場合それぞれに応じて一意性定理を得た。また、消費問題の特性を表す乗法的汎関数の時間大域的挙動を調べる事により、検証定理が成立する事を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダウンサイドリスク最小化問題をモデルの不確かさを容認した設定で考察する研究が進展している。すなわち、先行研究ではモデル化に際しランダムネスを標準ブラウン運動として定式化したが、ここでは、過去に依存したランダムネスを含む確率過程として組み入れた形で不確かさを容認したモデル設定を行い、モデル不適切要因に対する処罰項としてエントロピーを導入して、ダウンサイドリスク最小化問題を研究し、対応する微分ゲームのH-J-B -Isaacs 方程式の解析を通じて、類似した結果を得ている。一方また、無限時間範囲での最適消費・投資問題の研究も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
ダウンサイドリスク最小化問題についてモデルの不確かさを容認した設定で考察する研究を、さらに詳しく進め、具体的な市場モデルで解析解が得られるような場合の詳しい計算を実行する。また、対応する微分ゲームの H-J-B -Isaacs 方程式の解析を進め、不確かさの程度を表すパラメータ依存性の解析を進める。また、最適消費・投資問題の時間大域的挙動を考察するとともに、この問題に関しても、モデルの不確かさを容認した設定で、考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった書籍が年度内に納入できそうになかったため、次年度に注文する事とした。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越された助成金は書籍(消耗品費)等として使用予定である。次年度分は研究連絡のための、国内・外国旅費、招聘旅費、その他、研究遂行に必要となる関連図書、マニュアル類の購入や印刷費、研究補助のための謝金等として使用予定である。
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