制御項を含む半マルチンゲールの大偏差確率の漸近評価に関して双対性定理を導いた。これは、市場の数理モデルに関して、投資家の保有する総資産額の成長率が目標とする値を下回る確率を最小にする大偏差確率の時間大域的挙動に関する従来の結果を一般化して、制御項を含む確率積分として表される半マルチンゲールに関する最小化大偏差確率の漸近評価を得たものである。マルコフ過程の加法的汎関数に対する大偏差原理の研究はこれまで広く研究され、多くの応用が展開されてきたが、当該研究の結果は、制御項を含む半マルチンゲールに関する最小化大偏差確率に関するものであり、今後のさらなる応用の展開を見込もうと企図するものである。その結果を得るにあたっては、双対問題に関するエルゴード型H-J-B 方程式とその微分に関する解析とともに、その方程式をある確率微分ゲームの時間無限範囲の問題のH-J-B-Isaacs 方程式として捉える事が鍵となっている。さらにその結果をモデルの不確かさを容認した設定に対応する問題のロバストな評価に対応する、双対性定理を得た。これらの結果は再度、ファイナンスの数理モデルに立ち戻り、予め設定された確率過程をベンチマークとし、それを下回る確率に関する最小化大偏差確率の漸近挙動の考察や、不確かさを容認した設定でのファイナンスの数理モデルに対する問題へと展開させてゆく。一方、時間無限範囲で最適消費・投資問題のH-J-B 方程式の解の存在、一意性、および強検証定理を示した。
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