シュレーディンガー型作用素と分数積分作用素の評価に関する研究について,平成27年度は主にシュレーディンガー型作用素の評価に関する研究を行った.n次元ユークリッド空間上で高階のシュレーディンガー型の作用素を考える.ここでポテンシャルは非負の多項式を含むようなクラス(リバースヘルダークラス)に属するものとする. この作用素に関して,以下の結果を得た. 1. 階数が2のべき乗の場合の結果をふまえ,階数がすべての自然数の場合に,高階のカシオポリタイプの不等式を示し,Vがリバースヘルダークラスに属するという仮定の他にある条件を仮定し,シュレーディンガー型作用素の基本解の評価を証明した.それを用いてシュレーディンガー型作用素のハーディ・リトルウッドの極大作用素での各点評価を示した.この結果を用いて,これらの作用素がLp空間およびモリー空間でも有界となることを示した. 2. 1. の結果を用いて,シュレーディンガー作用素のべき乗の形の作用素をラプラシアンのべき乗とあるポテンシャルとの和で評価するような不等式を示した. 1.の結果は階数が2のべき乗の場合に限られていたものをすべての自然数に拡張したものである.また,2.の結果はポテンシャルが非負の多項式で階数が2の場合に限られていたものをポテンシャルがリバースヘルダークラスに属し,階数がすべての自然数の場合に拡張したものである. 上記のシュレーディンガー型作用素に関するLp有界性を示すためには,基本解の評価が重要な役割を果たす.階数がすべての自然数の場合に基本解の評価を示すためには,Vがリバースヘルダークラスに属する他にある条件を仮定する必要があるが,Lp有界性はこの仮定なしで証明できた点で,意義深いと考えられる.
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