研究実績の概要 |
1. システムの楕円型作用素(ラメ作用素,ストークス作用素など)のスペクトルの観点からの研究:(i) 弾性体の斉次方程式の多項式解, 有理型の関数(本研究での用語)の解の構成および構造, 特に次数毎の解空間の次元を決定した(本多,伊東氏と共同). (ii) ストークス作用素の固有値のHadamard型変分公式を導いた(Dirichlet条件の場合, 牛越氏と共同). スリップ境界条件の場合についてもHadamard型変分公式の形式的導出を行った. (iii) 小さな穴の開いた領域上のラメ作用素およびマックスウェル作用素の固有値の摂動公式の研究を行った. (iv) 細い棒を組合わせた複合的弾性体の振動構造の研究を行った. 2. 反応拡散方程式の研究:(i) 無限Y型グラフ上の熱核を明示的に計算した. それを活用して単独反応拡散方程式の時間全域解(無限の過去未来両方に亘る解)を構成した(髙澤氏と共同). これは直線上の同じ方程式の定常解がグラフになり空間対称性のやぶれに起因して波の進行が発生する現象である. 非線型項が一般になることで多種類の時間全域解が共存すると期待でき次の研究テーマを励起している. (ii) FitzHugh-Nagumo 方程式について定常解の安定性を解析するための汎関数を導入した. 各定常解はこの汎関数の停留点に一致しさらに定常解の線型化スペクトルの符号は対応する停留点での2階変分ヘシアンのスペクトルのそれに一致することを示した(CN.Chen,森田,氏と共同). 3. 複雑形状と静電ポテンシャルの研究:カントール集合に一様配置された電荷が作る静ポテンシャルに対する調和関数の特異性の特徴付けを行った(浜向氏と共同). 楕円型方程式の解の特異点の除去可能性について複雑形の集合や次元の観点からの結果を得た.
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