研究実績の概要 |
有限の大きさを持った既知の物体内に埋め込まれた未知の不連続性の位置や形状を、既知の物体表面上で波を励起し内部に送り、伝搬してきた波を表面上で有限時間観測して抽出する問題を、3次元有界領域における波動方程式に対する逆問題として定式化し、囲い込み法のさらなる可能性を追求した。その結果、物体の外部に仮想的に与えた点と物体内部に埋め込まれた未知の不連続性との最短距離を、物体表面上で有限時間観測された波から陽に抽出する極めて簡潔な方法を見出した。これが従来の囲い込みと決定的に違うのは、次の2点である。ひとつは、波を励起させるための物体表面上に与える時間領域におけるNeumannデータが仮想的に与えた点に応じて一個ずつ自然に与えられているということである。熱方程式を支配方程式とする類似の問題において展開した従来の時間領域における囲い込み法は, 仮想的に与えた点と不連続性との距離を求めるために、大きなパラメータに依存した理論上は無限個のNeumannデータが必要であったことから見るとこれは決定的な違いである。一つのinputが一つの情報をもたらすということで、きわめて自然である。もうひとつは、そのNeumannデータは、全空間で支配方程式の初期値問題を半群の理論の枠内で解くことで与えられるという点にある。これはこの新しい方法の汎用性と適用可能性が大いに期待できるということを意味する。 今後これをさまざまなタイプの時間領域における偏微分方程式を支配方程式とする逆問題に展開することは大変興味ある課題であろう。
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