研究実績の概要 |
調和解析的手法により非線形分散型方程式の初期値問題の適切性に関する問題を研究した.今年度は特に,以下の二つの研究を行った. 一つ目は, 昨年度から引き続き行っているものであり,3階までの微分を含む非線形項を持つ5次の半線形分散型方程式のトーラス上での時間局所適切性の研究である. 一般に, 半線形方程式の性質は時間局所的には線形部分によって支配されると考えられている. しかし, ある種の非線形項に対しては, 線形部分が分散型であるにも関わらず非線形項の影響により放物型方程式の性質があらわれることを発見した. 多項式型の非線形項を考え, このような放物型効果を持つ型の非線形項とそうで無いものに完全に分類した. 計算はすでに終わったが論文はまだ完成しておらず, 来年度に投稿する. 二つ目は,上記の研究を一般の奇数次の分散型方程式の場合に拡張する研究であり, 三階と五階の分散型の場合に対して, だいたいの証明方針が出来上がった. しかし, まだ多くの計算を行う必要があり来年度への継続課題である. この研究はYLC特任助教のTristan Roy氏との共同研究である. これらの研究成果は,調和解析的手法により非線形相互作用の様子を共鳴現象に着目して精密に解析することによって得られたものである.これらの研究は可積分系の代表例であるKdV階層に属するKdV方程式や5次KdV方程式に対する適切性の結果を含んでおり,可積分系としての対称性とは異なる構造を発見した点に意義がある.
|