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平成28年度の研究成果は大きく分けて2種類に分類され、いずれも非線形シュレディンガー方程式の初期値問題に対する解の大域的挙動に関するものである。以下、それぞれについての成果の概略を記す。
・複素係数の冪乗型非線形項を伴うシュレディンガー方程式の解の最大存在時間（ライフスパン）の下限についての精密な評価式を与えることに成功した。1次元ユークリッド空間上で非線形項が斉3次である場合については昨年度に佐川侑司氏と共同で同様の評価式を得ていたが、今年度得られた結果は、その2次元および3次元の場合への拡張を含んでいる。また、佐々木浩宣氏が2009年に発表した結果の精密化とみなすこともできる。以上の成果は佐川侑司氏・保田舜介氏との共同研究によるものである。
・複数の質量項をもつ非線形シュレディンガー方程式系の零構造の特徴づけに関する研究を継続した。空間1次元の場合には Chunhua Li 氏との共同研究によって昨年度までにある程度まとまった成果を得ていたが、今年度はその高次元化に取り組み、2次元の場合についてはほぼ類似とみなすことのできる結果が得られた。この結果により、まだ部分的にではあるが、代表者が川原雄一朗氏と共同で得ていた非線形Klein-Gorodn方程式系に関する2011年の結果や、片山聡一郎氏・的場俊昭氏との共同研究によって得られていた半線形波動方程式系に関する2015年の結果等、双曲型の場合に対する諸結果との比較も可能になったと代表者は考えている。以上の成果は迫田大輔氏との共同研究によるものである。
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