研究概要 |
【計画全体の目的】本研究では, 異常拡散を記述する幾つかの発展方程式に焦点を当て, それらの初期値問題に対する適切性(解の存在, 一意性, データ連続依存性), 正則性や対称性などの解の定性的性質, 解の漸近挙動等などを調べ, 各方程式・モデルの特徴を明らかにする. 更に個々の解析で有効な手法を確立する. 【H25年度の研究実績】(1)Fast Diffusion 方程式の解の漸近形の対称性と安定性の関係:ここでは非線形拡散方程式の一種である Fast Diffusion 方程式に焦点を当て,特に消滅解の漸近形の安定性と領域の対称性の関係について,幾つかのケーススタディを行った.その結果,球領域では球対称な漸近形が漸近安定になるが,ある条件を満たす円環領域では球対称な漸近形が不安定になることが明らかになった.またこれらの解析を通して,球対称な漸近形の対称性を破壊する Fast Diffusion Flow の構成法を確立した.これは Fast Diffusion 方程式の漸近形の安定性解析に必要な他,漸近形の特性方程式である Emden-Fowler 方程式の解の対称性の破れ(symmetry breaking)の証明にも応用することができる.また円環領域以外の領域に対しても,この手法が適用できることを例示した. (2)変動指数を含む非線形拡散方程式の解析:不均質な多孔質媒体中の拡散を表す変動指数を含む二重非線形発展方程式の可解性を示すために効果的なフレームワークの構築を行った.既存の二重非線形発展方程式の枠組みを変動指数を含む非線形拡散方程式に応用する場合,不均一性を十分に反映することが困難であり,可解性を保証する十分条件を得る際に,大きなロスが生じていた.ここで得られた一般論ではその点を改善しており,より不均一性を反映した条件下で可解性を保証することが可能になった.
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