研究課題/領域番号 |
25400164
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南部 隆夫 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (40156013)
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研究分担者 |
佐野 英樹 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (70278737)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 安定化論 / 擬似内部構造 |
研究実績の概要 |
解析半群を生成する線形放物系より広いクラスの C_0-半群を生成する線形系に対する安定化論を中心に研究を行った.本研究の特徴は,被制御系に関わる何らの有限次元近似(Riesz基底や有限差分近似等)も仮定しない安定化論の構築であり,競合する他研究と本質的に異なることである.前年度行った線形放物系の境界安定化論に続き今年度は,擬似内部構造として現れる有限次元構造の研究とより広いクラスの無限次元系に対する安定化論の研究を行った:(1) 1967年に完成され,その後様々なアプローチにより研究し尽くされた(と一見思われた)有限次元極再配置理論は,有限次元系安定化論の根幹を形成している.本研究ではこれまでにない新しい視点からの安定化論を提唱し,より簡単で具体的なフィードバック系の構成を保証した.すなわち,可観測性の仮定のもとで,指定された減衰率 ω>0 を達成し,半群の上界: M exp{-ωt}, t≧0 を実現する安定化制御器のより具体的な構成を行った.この制御系については,構成の簡単さのゆえに,本年度4年次卒業研究テーマの一つとして選び,様々な数値例を通じて,系のマージン M≧1 の値が,従来の極再配置理論や伝統的な最適制御論に基づくアプローチの場合と比較して,より小さくなる特性を見い出した.(2) 放物系では係数作用素である楕円型作用素のスペクトラムがあるセクターに存在するが,この範疇に属さない線形系が応用上現れる.たとえば,時間的遅れを伴う関数微分方程式はその典型であり,半群論の立場では放物系とエネルギー減衰のない純粋な双曲系の中間に位置する半群のクラスを形成する.そのようなより広い線形系に対する抽象的で統一的な安定化論について,有限次元動的安定化補償器の存在を証明した.この存在定理は,古典 Fourier解析の立場からは放物系と比べて制約的である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放物系より広いクラスの線形系に対する安定化論を達成でき,また,有限次元系安定化論に関する極めて新しく効率的なアプローチの提唱により,研究計画の大きな部分が完成した.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要欄 (1) で述べた有限次元系安定化論は,まったく新しいアプローチによる制御系構成をねらったものであった.しかしながら,多くの数値計算例を通じて,系のマージン M の値が,従来のアプローチと比較してより小さくなるという特性をもち,これは予想していなかった特性である.線形系が非線形系の第1次近似であるという立場からは,この M は小さい方が望ましい.大きい M の場合は実際,線形理論上は意味のある安定化でも,系の状態 (state) が初期時刻の近傍で大きく成長する可能性があり,線形近似モデルが破綻してしまうからである.このような小さいマージン M を保証する有限次元における議論は,無限次元系の安定化特性に好影響すると予想している.本年度は,この方向での研究を推進するとともに,(2) で述べた C_0-半群を生成する線形系に対する有限次元動的補償器の次元推定を行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末に計画していた研究会等への出張について,学内の年度末業務の処理を優先しなければならない状態になりました.そのため止むをえず,出張計画を中止し,次年度への繰り越し額が生じました.
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次年度使用額の使用計画 |
主として研究会での研究成果発表,関連情報収集のための旅費として研究費を使用したいと計画しています.
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