研究課題/領域番号 |
25400166
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田村 英男 岡山大学, 自然科学研究科, 名誉教授 (30022734)
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研究分担者 |
岩塚 明 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (40184890)
筧 知之 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70231248)
一瀬 孝 金沢大学, その他部局等, 名誉教授 (20024044)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アハラノフ・ボーム効果 / ソレノイド磁場散乱 / シュレディンガー作用素 / レゾナンス |
研究実績の概要 |
量子力学に従う粒子が磁場の中を運動するとき、磁場のみならず、それを生成するベクトル ポテンシャル自身もその運動に関与する。量子力学の根幹に関るこの現象は、アハラノフ・ボーム効果 (Aharonov-Bohm 効果, AB 効果) とよばれている。本研究では、スペクトル・散乱理論において培われた漸近的手法を駆使し、2次元磁場の散乱系において、捕捉現象によって実軸近傍に生成されるレゾナンスの分布に AB 効果がどのように関与するかを解析する。レゾナンス問題は、数学的散乱理論の現在を主導している中心的な研究課題のひとつであり、精力的な研究活動が欧米において展開されている。しかし、本研究で展開される研究課題「磁場散乱のレゾナンスにみる AB 効果」は、他に類を見ない独自の試みである。 本年度に得られた研究成果について述べる。少数個(3個あるいは4個)のソレノイド磁場による散乱系において、レゾナンスの位置に AB 効果がいかに関与するかを解明した。研究対象とする散乱系は、量子が有する波動性と粒子性がともに顕在する簡単かつ重要な量子系である。波動性は、磁場を生成するベクトル ポテンシャルによるAB 効果を通して波動関数の位相変化に現れ、一方、粒子性は、捕捉現象によって記述される。得られた結果は、レジュメ形式の論文 (Proc.Japan Acad.Ser.A) を通して公表し、いくつかの小規模な研究セミナーの場でも報告してきた。また、この結果は、2個の場合について昨年度に得られた結果 (Adv.in Math.) の改良にもなっている。さらに、研究分担者の岩塚(京都工芸繊維大学)は、波動現象のレゾナンス問題で優れた研究業績がある Vodev 教授をナント (Nantes) 大学(フランス)から招聘し、京都大学数理解析研究所の作用素論セミナーの場で講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的とした課題について3編の論文を書き上げ、昨年度は投稿中の状況にあった論文が2016年に掲載されることが決定し、当初の目的は達成できたものと判断できる。現在は、得られた結果のさらなる一般化を目指している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度になる来年度は、研究実績の概要で述べたレジュメ形式で公表している論文を本格化させる。研究成果の講演について、フランスのレンヌ (Rennes) 大学(フランス)からワークショップ(Magnetic Field and Semi-Classical Analysis)への招待を受けている。また、国内では、京都大学数理解析研究所の研究集会「散乱極と測地線の幾何の再解釈と新展開」(代表者・伊藤健一(神戸大学))から講演依頼を受けている。さらに、来季への研究課題の準備として、一直上に位置する3個の障害物による散乱におけるレゾナンス問題を考え、3個のソレノイド磁場による散乱のレゾナンス問題との類似点を探る。 研究分担者 筧(岡山大学)は、研究課題への幾何学的側面からのアプローチを継続課題として取り組むとともに、数理解析研究所での研究集会「スペクトル・散乱理論とその周辺」を主催する。また、新規に研究協力者として加わる一瀬(金沢大学・名誉教授)は、経路積分からの手法を駆使し、閉じた古典軌道からレゾナンスが生成されるメカニズムについて、物理的な視点に基づく直感的な解釈を模索する。
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