研究課題/領域番号 |
25400175
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 孝行 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50272133)
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研究分担者 |
梶木屋 龍治 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10183261)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 圧縮性流体 / Navier-Stokes 方程式 / Stokes 方程式 / 消散型波動方程式 / 非線形波動方程式 / 線形粘性弾性体方程式 |
研究実績の概要 |
圧縮性 Navier-Stokes 方程式の定数平衡状態の安定性の研究で示唆されていることは, 解の拡散波動の現象と広い意味での Huygens の原理を明らかにすることである.そのために, 解の第一近似として現れる Stokes 方程式を中心に, 解の時間に関する漸近挙動について研究を行った.圧縮性 Navier-Stokes 方程式の定数平衡状態の周りでの線形化方程式の場合, 拡散項,拡散波動項,高減衰項に漸近的に分類され, 第一近似は, Stokes 方程式の初期値境界値問題の解の速度場であることが知られている. そのため3次元以上の滑らかな境界をもつ外部領域,2次元以上の摂動半空間における非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値境界値問題を考察し,解のプロファイルを明瞭にする関数空間として, Muckenhoupt クラスに属する空間に関して非斉次の重みが付いた Lp 空間を考え,その空間上での Stokes 半群の重み付き Lp-Lq 評価を示し,非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の解の重み付き Lp 空間において, 解の時間に関する減衰評価を導いた.外部領域では全空間における Stokes 半群の重み付き Lp-Lq 評価を導き, Stokes 半群の境界の近くの局所エネルギー減衰評価を用いることで Stokes 半群の重み付き Lp-Lq 評価を示した.摂動半空間においては,半空間における Stokes 半群の表現公式を用いて重み付き Lp-Lq 評価を導き, 摂動部分近くの局所エネルギー減衰評価と合わせて Stokes 半群の重み付き Lp-Lq 評価を導いた. これらの結果を用いて,非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の上記の場合の初期値境界値問題について,重み付き Lp 空間において,解の時間に関する減衰評価を導くことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
圧縮性 Navier-Stokes 方程式の定数平衡状態の安定性の研究において, 定数平衡状態の周りでの線形化方程式の全空間における初期値問題,半空間における初期値境界値問題の場合, 解は,拡散項,拡散波動項,高減衰項に漸近的に分類されることが知られており, 第一近似は, 半空間の場合は非圧縮性 Stokes 方程式の初期値境界値問題の解の速度場である,そのため,3次元以上の滑らかな境界をもつ外部領域,または2次元以上の摂動半空間における非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値境界値問題を考察し, 解のプロファイルを明瞭にする関数空間として, Muckenhoupt クラスに属する空間に関して非斉次の重みが付いた Lp 空間を考え,その空間上での解の時間に関する漸近挙動の研究を行った.2次元の場合,これまでの研究で,外部領域における消散項付き非線形波動方程式の初期値境界値問題や全空間における非線形熱方程式の初期値問題において,Hardy 空間と BMO 空間の duality に関する Fefferman-Stein 不等式とMorawetz の方法を用いたエネルギー法によって非線形構造に着目することで,解の時空間の L2 有界性が得られており,これらの方法と合わせることで, 非圧縮性 Navier-Stokes 方程式や圧縮性 Navier-Stokes方程式への応用が可能であり, 当初の目的へと順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題を遂行するためには,多くの数学者との研究討論が不可欠であり,また,最新の結果や 手法を常に研究することが必要である.そのため,研究分担者の佐賀大学の梶木屋龍治教授と,圧縮性 Navier-Stokes 方程式の解の拡散波動の現象の解析の中で,Morawetz の方法を用いたエネルギー法の確立のために重要な楕円型偏微分方程式の研究討論を行う.連携研究者である熊本大学の三沢正史教授と線形粘性弾性体方程式の実解析的な手法,九州大学の隠居良行教授と圧縮性 Navier-Stokes 方程式の非線形解析,筑波大学の久保徹隆助教と,非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の解の重み付き評価に関する研究討論を行い, 研究代表者である申請者が総括する.また,解析系のセミナー等に出席し情報収集を行い, 多くの数学者と研究討論を行う. 特に,線形粘性弾性体方程式の初期値問題の研究をもとに,非圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値問題への応用を考察し,圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値問題の解の密度部分の拡散波動現象を研究する. (1) 三沢正史教授と研究討論し,線形粘性弾性体方程式の初期値問題の研究をもとに,非圧縮性 Navier-Stokes 方程式と圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値問題への応用を研究する. (2) R. Coifman, P. L. Lions, Y. Meyer and S. Semmes の結果の境界値問題への拡張について梶木屋龍治教授と共に研究討論し,線形粘性弾性体方程式の初期値境界値問題への拡張を考え,圧縮性 Navier-Stokes 方程式の初期値境界値問題の拡散波動現象について研究する.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の遂行のために重要な主催者としての開催予定の国内外の研究集会が今年度に集中したため.
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次年度使用額の使用計画 |
国内で主催者として開催予定の3つの研究集会への旅費と研究者の招聘.国外で主催者として開催予定の2つの研究集会への旅費と研究者の招聘に用いる.
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