非線形消散項もしくは非線形増幅項を含むシュレディンガー方程式の初期値問題について、解の減衰評価と爆発解の存在証明を完成させることができた。前者の減衰評価については、中村能久氏(熊本大学)との共同研究により、論文を完成させて国際会議のproceedingとして現在投稿中である。この研究では、初期データがH1かつ1次のweightを掛けてもL2に入るようなクラスに属し、十分小さいときに、解のL∞ノルムの減衰オーダーがtの-1/(p-1)乗になることを示している(※ pは非線形項のベキである)。同様の結果が下村明洋氏(東京大学)との共同研究で既に示されていたが、ここでは非線形項のベキpがどこまで下げられるのかという課題を解決することに力点が置かれている。今後は、ベキpを更に下げることが課題になる。もう一つの爆発解の存在証明については現在のところTeX化の最中である。これは、空間次元が1次元で非線形のベキが 2<p≦3 の範囲にあるときに、初期データ(0ではない)のL2ノルムがどんなに小さくても、有限時刻で解のL2ノルムが正の無限大に発散するような事態が起こりうることを主張している。方法論は以下の①~④のとおりである。①truncated L2 ノルムの理論を用いて、初期データから過去に向かって解を延長したときにそのL2ノルムが0に潰れていくことを示す。②Lapracianを落とした非線形シュレディンガー方程式で爆発解の基本形を構成する。③この爆発解の基本形に摂動をつける要領でもとの非線形シュレディンガー方程式の解を過去に向かって時間局所的に構成する。④③の解から①の方法で過去に向かって解をつないでいき、L2ノルムが十分小さくなったところで、逆に未来に解をたどっていけば、これが小さな初期データに対する爆発解になっている。空間次元をn次元にすることは未解決。
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