研究課題/領域番号 |
25400182
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岡沢 登 東京理科大学, 理学部, 教授 (80120179)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流(イタリア) / 係数同定問題 / 作用素半群理論 / 無限次元陰関数定理 / 熱方程式の解の存在 / 荷重ルベーグ空間 / シュレーディンガー型作用素 / 極大増大性 |
研究概要 |
本研究課題では、その元になった論文Mola(2012)で採用しているガレルキン法を、作用素半群理論の方法で置き換えることが、各方面への一般化のための基礎になるものと信じ作業を開始している。G. Mola氏とは昨年6月にイアリアのコルトーナでの研究集会で再会し、共同研究の第一報を集会の報告集に投稿することも視野に入れていた。ところが、その集会の代表者でもあり、Mola研究員の指導的協力者であったA. Lorenzi教授が昨年11月に急逝するという事態に見舞われてしまった。こういう成り行きから本研究の代表者、岡沢が、締切日に追われて一方的な形で共著論文を完成させてしまうことにためらいを感ずるに至った。Mola氏が糸の切れた凧のようになることを心配したわけである。そこで、Mola氏本人の希望もあり、平成26年4~5月に1か月東京に滞在してもらい、Mola氏が半群理論についての自分の疑問点を解消した上でMola氏の手で論文を完成させてもらうことに決めた。偉そうなことをいうつもりはないが逆問題の1つである係数の同定問題のプロであるMola氏が、半群理論のよき理解者になってくれることは、かって日本が得意とした半群理論の新展開のためにも有意義のはずである。若手の育成という面があることも間違いない。 逆問題に偏ることなく順問題の考察もするとした研究目的にそって、2つの共著論文を完成、投稿した。両方とも掲載が決定し、一方は、近日中に刊行予定であるがon lineでは既に公表されている。もう一方は、上記コルトーナでの研究集会の報告集に掲載される予定である。この他にも進展中の共同研究があるが、論文としては未完成である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実績の概要に述べた通り、主目的の論文完成はこれからであるが、その最終段階を次年度の開始早々に設定できているので、特に心配することはないと思っている。応用例も、まだ線形の問題ではあるが、少なくとも2種類の課題が手の届くところにあり、その後は線形の問題での議論の精密化や非拡散型の複素ギンツブルク・ランダウ方程式といった非線形の問題を対象に考察を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
線形の放物型発展方程式の初期値問題: (d/dt)u(t)+{\nu}Au(t)=0(0<t<T), u(0)=u_0の一意可解性は保証されているものとする。この解の一意存在性に、もう1つ解の情報を追加することで係数\nuを特定してしまおうというのが係数の同定問題である。その基礎になるのは、近似問題: (d/dt)u_{\lambda}(t)+{\nu}A_{\lambda}u_{\lambda}(t)=0(0<t<T), u(0)=u_0である。昨年度の研究実施計画では同じ吉田近似でも列A_{n}を採用していたが、連続パラメータのA_{\lambda}、\lambda > 0、を採用し、そのパラメータについて自由に微分・積分することが効率的なことに気付いた。後は、\lambda \to \inftyの極限操作に持ち込む段階に達しているというのが現状である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1. 昨年(平成25年)6月に本年(平成26年)3月1日から3月31日までの1か月イタリアのボローニア大学での共同研究の誘いがあり, そのつもりでアパートの予約金も支払っていたが、1月末に家族の病気が明らかになり計画は遂行できなかった。この往復の航空運賃の科研費からの支出を予定していたが、帰国予定が4月1日だったので平成26年度の支出として扱われるといわれていた。別の研究面でも多忙で急な使用計画の変更は難しかった。 2. 昨年(平成25年)11月に共同研究の相手から本年(平成26年)4月23日から5月22日までの1か月間東京に滞在するための費用負担の打診があった。そのため平成25年度の使用予定額の一部を次年度に回すことで対応できると考えた。 上記理由の2.の計画は実行されつつある。また、昨年度見送った、軽量の新しいノートパソコンを購入すれば、助成予定額に達するものと思う。現在使用中のものは、反応が鈍くなってきている。
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