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2014 年度 実施状況報告書

発展方程式における同定問題の作用素半群理論的解明

研究課題

研究課題/領域番号 25400182
研究機関東京理科大学

研究代表者

岡沢 登  東京理科大学, 理学部, 教授 (80120179)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード発展方程式 / 角型増大作用素 / 解析的半群 / 拡散係数 / 逆問題
研究実績の概要

拡散を記述する放物型偏微分方程式には拡散係数が含まれる。順問題といわれる普通の問題では、拡散係数は与えられた定数である場合が基本的である。その一方で、拡散の仕方(方程式の解)が分かっていれば、そこから観測される量に基づき未知の拡散係数が同定されるのではないかと考えるのが逆問題である。具体的な偏微分方程式に対しては多くの可解な逆問題が知られているが、問題を抽象化した発展方程式では研究はそれほど進んでいない。昨年度の前半には、発展方程式としては一番単純な、ヒルベルト空間で正定値自己共役作用素を持つ場合の結果を導き、論文にまとめて投稿したが不採択に終わった。事情があったとはいえ少し詰めが甘かったと言わざるを得ない。これは現在、近似理論の立場から改訂中である。その一方で、上に触れた結果をバナッハ空間にまで拡張した論文をまとめ、昨年本研究費の支援の下に参加したボローニア(イタリア)での研究集会の報告集へ投稿中である。(ボローニアでの発表については項目13の[学会発表]に記載してある。) こちらは前のものに比べるとかなりの自信作といってもいいと感じている。不採択になった論文を再投稿し、掲載決定が得られないと昨年度の作業は終わった感じがしないが、続きは本年度(最終年度)の研究実績に盛り込めるように頑張りたい。

昨年度と同様に逆問題に偏ることなく順問題も考察するとした研究目的に沿って、2つの論文の校正作業を行い、項目13の[雑誌論文]に記載の通り、論文が刊行された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

刊行された論文こそまだないが、方程式の係数の同定という逆問題についての理解は深まってきている。昨年度までは同定すべき係数は1つであったが、N個の係数の場合はグラムの行列式が登場し、Nが2以上のときは陰関数定理が一般に大域的には成立しないところが難しさの原因になっている。N=2のときには図形的な考察も可能であり、非線形問題への拡張作業もできそうである。

今後の研究の推進方策

現在投稿中の論文の査読結果が出たら、改定中のものを、近似理論を前面に出す形にして再投稿する。その間に2パラメータの同定問題の完成稿を準備する。ここでは2つの自己共役作用素 A, B の凸結合、即ち、a, b > 0 に対する aA+bB の自己共役性を保証する何らかの条件が必要になるが、それには研究代表者が1980~90年代に得ていたものが役に立つようである。特に、B が有界作用素、正確には B=I (恒等作用素)の場合には、既に、Lorenzi-Mola(2012)の研究があり、B も非有界にできれば、この結果の大幅な改良になるものと予想される。具体例としては、A が x 変数の1次元調和振動子の Hamiltonian、B が y 変数の1次元調和振動子の Hamiltonian の場合を想定している。従って、単純な和 A+B は2次元の調和振動子の Hamiltonian ということになる。この場合には固有値と固有関数が容易に計算可能なことが役に立ち、N 変数化の可能性も見えてくると期待される。

次年度使用額が生じた理由

予定していた学会に参加することが出来ず、その分旅費・参加費の支出が少なくなった。また年度末に2つの論文の締め切りが重なり、ノートパソコンを買い替える時間的な余裕がなくなってしまった。

次年度使用額の使用計画

まず昨年度とほぼ同額の旅費(今回はイタリアのパルマでの研究会と京大数理研での研究集会)に加えて、日本数学会の平成27年度秋季総合分科会(京都産業大学)参加のために旅費を使う予定である。今回のイタリア出張では、現在、9月までの予定でパドバ近郊に滞在中の本学助教の吉井健太郎とも会いたいと思っている。吉井は、双曲型発展方程式の順問題の共同研究者であり、継続中の課題が準備中という事情もある。ホストプロフェッサーにもあいさつができればより意義深くなるものと思う。残った費用で、古くなって、反応が鈍く感じられるノートパソコンを新しいものに買い替えれば、あとは昨年度に全くできなかったこまごまとした洋書の購入を検討していきたい。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] 複素 Ginzburg-Landau 方程式の作用素論2014

    • 著者名/発表者名
      岡沢 登
    • 雑誌名

      数学

      巻: 66 ページ: 275--297

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] L^{p}-theory for Schroedinger operators perturbed by singular drift terms2014

    • 著者名/発表者名
      N. Okazawa and M. Sobajima
    • 雑誌名

      Springer INdAM SEries

      巻: 10 ページ: 401--418

    • DOI

      10.1007/978-3-319-11406-4_18

    • 査読あり
  • [学会発表] Identification problem for an elliptic problem in Hilbert space -- new observation2014

    • 著者名/発表者名
      N. Okazawa
    • 学会等名
      PDE's, Control Theory and Inverse Problems
    • 発表場所
      Bologna University
    • 年月日
      2014-09-15 – 2014-09-19
    • 招待講演

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公開日: 2016-05-27  

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