研究実績の概要 |
A, Bは、複素Hilbert空間 H 内の2つの非負自己共役作用素とする。それらの一次結合{\alpha}A+{\beta}Bを係数に持つ発展方程式の初期値問題を考える。即ち、方程式の形としては(d/dt)u(t)+{\alpha}Au(t)+{\beta}Bu(t)=0を仮定する。Hilbert空間では、この問題が可解になるための1つの十分条件は、内積を使って、Re(Ax,B_{\lambda}x) \ge 0とかくことができる(x \in D(A))。ここで、B_{\lambda}は作用素 B の吉田近似といわれ、x \in D(B) のとき B_{\lambda}x \to Bx (\lambda \to 0) がいえる。このとき{\alpha}A+{\beta}Bも非負自己共役で、初期値がxの方程式の解はu(t) = T(t)xで与えられる。ただし、T(t) = \exp[-t({\alpha}A+{\beta}B)]は、{\alpha}A+{\beta}Bを(負の)生成作用素とする解析的縮小半群である。即ち、この問題は放物型の偏微分方程式に対応している。我々が設定した同定問題は、方程式を時間区間(0,T)で考え、時間区間の終点Tで作用素AとBの平方根を使って表される量が観測されたものとするとき、「\alpha、\beta が(一意に)決まり、データ \varphi、\psiと\|x\|に連続的に依存するか」というものである。こ方程式の係数が1つだけのときは陰関数定理だけで満足すべき結果が得られたが、係数が2つになると図的な考察も必要になるなど解法の困難は倍加するようである。
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