研究概要 |
消散型波動方程式のコーシー問題の解は,時間発展とともに,対応する拡散方程式の解に漸近をする,すなわち,解の拡散現象を持つ.この現象について,解表示を用いた空間1,3次元における結果を2003年に,2編の論文として発表した.その後の発展をサーベイした論説「消散型波動方程式の解の拡散現象」(数学62巻第2号(2010), pp. 164-181) の英訳が,"Sugaku Exposition"から発行された.さらに,最近の発展も含めた論文も発行され(研究発表欄の2編の論文参照),平成25年度の実施計画のひとつである最近までの結果についてのまとめは予定通りなされたものと思われる.しかしながら,波動現象を展望しつつ,拡散現象と波動現象の臨界の場合については思わしい進展は見られなかった.それらについては,池畠-Todorova-Yordanov, 若杉,D'Abicco, Reissig 氏らによる進展がみられた. 波動現象と拡散現象を観察するうえで,波動方程式と消散型波動方程式がカップルした連立系のコーシー問題を考察するのは意味のある,しかしながら難解な問題であると思われる.この問題を展望しつつ,2つの消散型波動方程式がカップルした連立系のコーシー問題については,空間3次元までの優臨界の場合に,小さなデータに対する時間大域解の存在とその漸近形まで含めて考察した(Osaka J. Math. 49 (2012), 331-348). さらに続けて,臨界,劣臨界の場合における解の爆発現象に関する結果を不完全ながらも得て,2013年8月のクラクフ(ポーランド)における ISAAC Congress において発表した.その後,空間高次元における問題も含めて,若杉勇太氏(大阪大学)の協力も得て,さらに研究を続行している.
|