研究課題/領域番号 |
25400184
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西原 健二 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (60141876)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 消散型波動方程式 / コーシー問題 / 拡散現象 / 波動現象 / 臨界指数 / 解の大域存在 / 解の爆発 |
研究実績の概要 |
消散型波動方程式のコーシー問題の解は,時間発展とともに,対応する拡散方程式の解に漸近をする,すなわち,解の拡散現象を持つ.この現象について,解表示を用いた空間1,3次元における結果を2003年に2編の論文として発表した.その後の発展を含めて2011年に行った招待講演の内容が発行された(論文1).さらに,今年度は半線形消散型方程式の2×2の連立系の研究を進め,対応する放物型方程式系の半線形項の臨界指数と同じであることを得た.より具体的には,半線形項の優臨界指数に対しては小さい初期値に対して 時間大域的に一意解が存在し,ほぼ最適な減衰レートも得た.臨界と劣臨界指数の半線形項に対しては,有限時間内に解は爆発し,特に劣臨界指数の場合には爆発時間の上からの評価も得た.その後,下からのほぼ最適な評価も得た.これらは,大阪大学の若杉勇太氏との共同研究として得られ,下記研究発表欄の2,3の論文や国内外の研究集会において成果が発表された(下記研究発表欄を参照). その後も,より一般のk×k方程式系や,時間あるいは空間に依存する消散項をもつ場合の半線形消散型波動方程式系について,共同研究を進め,半線形項の指数の臨界指数を求めることができ,若杉氏との共著論文としてまとめられ,学術雑誌へ投稿されている.さらに,国内外の研究集会で成果の発表を予定している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
半線形の消散型波動方程式系のコーシー問題について,臨界指数を確定すると共に,優臨界指数のときの解の時間大域的一意解の存在を求め,劣臨界の場合の有限時間内の解の爆発と爆発時間のほぼ最適の上下からの評価を得た.さらに,時間あるいは空間に依存する係数を持つ消散項が効果的の場合に,同様に,臨界指数を求めることができているので,研究の進展はおおむね順調と思われる.しかしながら,波動現象についての結果については得ることができていないので,当初の計画以上に進展しているとは言えない状況である.
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今後の研究の推進方策 |
連立系の半線形消散型波動方程式のコーシー問題について,これまでは,消散項が共に同じ形のものについての研究が続いている.消散項が共に効果的であっても,異なる場合についての考察を進めていきたい.困難な問題と思われるが,効果的な消散項と非効果的な消散項をもつ消散型波動方程式系のコーシー問題の臨界指数の特定についての研究を少しずつでも進展させたいと考えている.そのことが拡散現象と波動現象の理解に何らかの貢献をすると考えられるからである.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の使用予定額は,国際会議の出席予定があり,次年度配当予定の研究費を繰上げて交付してもらい,当初予定をかなり上回る形で交付して頂いた.それに従って,ほぼ予定通りに使用したが,わずかに残ったものである.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は大きなものではない.国際会議への出席予定があるので,海外旅費等の次年度の使用計画に組み込んだ形で使用していきたい.
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