過去からの影響を強く残している時系列モデルである長期記憶過程等として観測される現象は理工学の様々な分野で多数知られている.その確率的性質を規定するのは Hurst指数と呼ばれるパラメータの値の推定が基本的に重要である.推定量の評価に当たっては推定量の漸近分布が必要であるが,従来,漸近分布は古典的な正規分布ではなくなってしまう事がしばしばあり,その場合,統計的評価が非常に複雑なものとなってしまう.しかし,ウェーブレットドメインでの推定量は,時間-周波数空間での相関分解性により,漸近分布を正規分布へと転換できる.そのための理論的な共分散減衰性評価のストーリー全体像を与えた.
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