研究実績の概要 |
本研究は,非正則な場合における有効な逐次推測方式を構築することにある.本年度は,非正則な場合における,ダイバージェンスに基づいた無情報事前分布に関する研究を行った. ベイズ推測において事前分布の選択問題は重要であり,今日に至るまで多くの議論がなされてい る.特に事前情報が少ない場合,または事前情報が全くない場合には客観事前分布あるいは無情報事前分布と呼ばれる事前分布を考える必要がある.歴史的に,一様事前分布が無情報事前分布として用いられてきたが,これはパラメータの 1 対 1 変換に 対して不変性を持たないことから多くの批判があった (Robert (2001),Ghosh et al. (2006)).パラメータの 1 対 1 変換に対して不変な無情報事前分布として Jeffreys の事前分布がよく知られており,これは Fisher 情報量の平方根に比例した形をしている (Jeffreys (1961)).この事前分布は,適当な正則条件のもとで事前分布とそれに対応する (漸近) 事後分布の間の差異を Kullback-Leiblerダイバージェンスで測り,それを最大化するものとしても得られる (Bernardo (1979), Ghosh et al. (2006)). しかし,上記の結果は密度の台が未知母数に依存するような非正則な確率分布に対しては適用できない.そこでGhosal and Samanta (1997) で考えている非正則な確率分布のクラスにおいて α-ダイ バージェンスに基づいた無情報事前分布を導出し,Ghosh et al. (2011) による正則な場合との比較を行った.
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