研究課題/領域番号 |
25400190
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坪井 明人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30180045)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | モデル理論 / 数理論理学 / 一様樹形図 / Erdos-Rado / Ramsey / 無限組み合わせ論 |
研究概要 |
モデル理論におけるコンパクト性とは,一階論理式の集合Γにおいて,Γの任意有限部分がモデルを持てば,Γ自体もモデルを持つという定理を指す.モデル理論ではこのコンパクト性があるために,言語が可算の場合には,あまり大きな基数を用いずに議論することが多くの場合に可能である.すなわち集合論あるいは無限組み合わせ論の結果を用いない議論が通常は成立している. 上記の一般的な見方に対して例外となる定理はいくつか知られている.Morleyのタイプ排除定理の証明とShelahによる一様樹形図の存在定理,単純理論におけるMorley列の存在定理などがそれらにあたる. これらの定理はErdos-Radoの定理(無限組み合わせ論の定理でRamseyの定理の拡張に近い形をしている)を用いて通常は証明される.しかし考えてみればわかるように,非常に大きな基数に対する組み合わせ論を用いなければ,可算に対する性質も証明できないとすれば,それは不自然な感じがする.この不自然さに対する感覚は多くのモデル理論研究者の共通の感覚であり,なるべく大きな基数を議論に出さずに,なるべく低い基数だけを用いた証明を与えたいと多くのモデル論研究者は考えてきた. 我々はMorley列の存在定理とそれを用いた分岐(forking)の基本性質をErdos-Rado定理を用いずに,コンパクト性と無限Ramseyの定理を用いて証明することに成功した.また一様樹形図の存在に関してもコンパクト性と無限Ramseyの定理だけで証明することに成功している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一様樹形図の存在とタイプ排除定理に関して研究を行うことを一年目の目標にしていた.一様樹形図は単純理論およびそれをさらに一般化した理論(条件を弱めた理論)の解析に重要な対象であり,タイプ排除定理は比較的に小さなモデルを構成するために重要となる定理である. 我々は,主に一様樹形図の存在に関して研究を行い,申請書作成時の方針とは多少異なった視点から考察を行うことが重要なことに気づき,それを実行した.研究の方向性の変更ではあるが,研究上明らかにすべき目標は同一である.新しい知見が得られたことで,より深い考察が可能になった.
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今後の研究の推進方策 |
タイプ排除定理の考察を続けて行く.一様列の存在に関しては,コンパクト性により大きなモデルを作ることが重要であった.対してタイプ排除定理においては,なるべく小さなモデルを構成することを考えなければならない.この点を踏まえて研究を続けて行く. また1年目での研究成果の状況を考えて,今後は応用方面では,(1)超準モデルによる数学的構造の構成,(2)グラフ理論への応用,(3)安定性と単純性に一様列を用いることの研究,などを今後手掛けてゆきたいと思っている.
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次年度の研究費の使用計画 |
筑波大学で研究打ち合わせ(小研究集会開催し神戸大学,法政大学の研究者と研究打ち合わせを行う)を行うための旅費として使用する予定でいたが,先方との日程調整を行った結果,相方の都合がつく日程を決めることができなかった.このため次年度に改めて研究打ち合わせを行うこととなった. できるだけ早期に研究打ち合わせを実施するつもりである.
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