研究課題/領域番号 |
25400190
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
坪井 明人 筑波大学, 数理物質系, 教授 (30180045)
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研究分担者 |
塩谷 真弘 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30251028)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | モデル理論 / 意味論 / モデル完全性 / モデル随伴理論 / グラフ |
研究実績の概要 |
モデル理論(model theory)において重要となる概念が理論Tのモデル完全性(model completeness)である.モデル完全性は構文論(syntax)と意味論(semantics)の両面から定義でき,モデル理論で重要な概念であり古くから研究対象となっている. Tのモデル完全性が分かれば,意味論的,構文論的両方の手法を用いて,その性質を調べることができるので,非常に有用な情報となる.このことに関連して,理論Tの拡大でモデル完全なものがあるか,あるいはTの随伴理論(model companion)でモデル完全なものがあるかを調べることが重要となる.これが可能な時に随伴可能(model companionable)と表現する. 我々の研究は,理論Tの随伴可能性の判定しやすい条件を探すことである.注目したのはグラフ言語で書かれた理論の随伴可能性である.一般に有限言語で表現された理論はグラフ言語の理論の中に翻訳が可能となる.したがって,グラフ言語に対象を制限することは,一般性を極端に失うことはないと考えられる.今我々がグラフと考えるのは2項述語記号Rを言語として持つ構造で,対称性(xRy → yRx)と非反射性(¬ xRx)を持つ構造のことである.グラフの公理を拡大する理論Tにおいて随伴可能性を調べた. 結果A: T が随伴理論を持つための必要十分条件は,すべての存在型論理式 δ(x)に対して,本質的に有限個の obstacle が存在することである. 結果B:T が随伴理論を持たないための必要十分条件は,(解を持つ)存在型論理式δ(x)とΓ(x)が存在して,(a)存在閉モデルにおいて,Γを満たせばδを満たす,しかし(b)すべての有限集合Γ0 ⊂ Γに対して,δ-obstacle δ' でΓ0(x) ∧ δ′(x)が満たされる存在閉モデルが存在する. これらの一般言語に対する特徴づけを用いると,例えば次の結果が得られる: 結果C: 平面グラフの理論は1階論理式の集合T_Kの形で表現される.したがって,随伴可能ではない.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を遂行する上でジェネリック構造に関する研究は非常に重要である.ランダムグラフの研究はそのための第一歩に属する.ランダムグラフと彩色の研究において,当初予想していた以上の複雑さがあることが判明した.そのため研究課題進展のための研究計画を後ろ倒しする必要が生じた.
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今後の研究の推進方策 |
ランダムグラフの辺彩色については,一応の結論を得ている.すなわちその部分構造としてのランダムグラフ(したがって無限構造)で,彩色が一様になっているものの存在は示された.今後は,部分構造に関する彩色に関する研究と一般のジェネリック構造の研究を進めてゆく.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題遂行上で一番重要となるランダムグラフの研究成果をまとめる作業が予定よりも多少遅れている.そのため研究成果の発表を行うための出張旅費,投稿料などの支出が減ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を国際誌に発表する際にオープンアクセスジャーナルを検討している.そのための掲載料,また海外での研究成果発表のための旅費などに使用を予定している.
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