本年度は5年間に渡る本研究の最終年度である。本年度は昨年度報告書に今後の推進方策として挙げていたことのうち、マトロイドの拡張としての視点を研究に取り入れることを1つの課題とした。その1つの成果として、マトロイドを本研究で主に扱っている任意の頂点部分集合への制限がshellable、partitionableもしくはsequentially Cohen-Macaulayであるような純でない複体の系列に乗るように拡張することを考えた。この方針で、各純骨格がマトロイドの性質を持つ、純でない複体(非純マトロイド複体)を考えることを提案し、これを部分構造に閉じた性質として特徴づける方法の提案、および、一連の系列における位置づけの明確化を議論した。この単体的複体の特徴づけには、これまでに見ていた頂点部分集合への制限とは少し異なる、k-制限という操作を導入し、任意のkと任意の頂点部分集合に対してk-制限が純であることが非純マトロイド複体であることの特徴づけとなることを示した。 また、昨年度までのpartitionableな単体的複体と弱い形のh-triangleの非負性に関する研究も続け、partitionableな単体的複体の種々の特殊な構造を調べた。SDNNH性とflag complexについて昨年度来続けた考察は終結を見るところまで進められなかったが、partitionableな単体的複体とSDNNH性の関係については本研究においては締めくくりとし、国際シンポジウムでの発表を行った。
|