研究課題
[1]ケルマック・マッケンドリックの再感染モデルを年齢構造化個体群モデルとして定式化して、そのエンデミック閾値現象を検討した。本モデルにおいては、免疫減衰による変動感受性と回復個体の再感染が考慮されており、各状態のホスト個体群は滞在時間に依存するパラメータをもつ。再感染モデルにおいては、再感染による疫学的な二次感染者再生産力の増幅がおこると、基本再生産数が1以下の劣臨界状況でも後退分岐によるエンデミック定常解が存在しうる。その場合には基本再生産数を1より低く保つという感染症予防原則が必ずしも感染症の根絶を導かない。本研究において、後退分岐の発生条件を求めるとともに、現実的な環境で劣臨界分岐が可能となるような状況を導くように基本モデルを拡張した。このことによって無症候性の感染が二次感染者の再生産力を引き上げているケースにおいては、劣臨界分岐がおきやすく、流行の抑止が困難になることが示唆された。またより現実的な応用へのステップとして、人口学的な年齢構造を導入してモデルを拡張してその侵入条件、定常解の存在条件を示した。[2]理論生物学、実験生命科学の研究者と共同で、(a)体内のウィルスダイナミクスのモデルを構築して、パラメータの実測値を得ることで細胞間直接感染によるウィルスの基本再生産数を定量化して、その寄与度が60パーセントと高い水準にあることを明らかにした。これはフリーウィルスによる間接感染を阻害しても治癒効果は限定されることを示唆している。(b)また個体の異質性を考慮したHIV流行モデルを開発して、特定タイプのHIVウィルス(HIV-1M)がパンデミックとなって要因としてある種のウィルスタンパク(HIV-1Vpu)の存在が大きく貢献していることを定量的に明らかにした。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件)
Josai Mathematical Monographs
巻: 9 ページ: 105-133
eLIFE
巻: e08150 ページ: 1-16
10.7554/eLife.08150
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 12256
10.1038/srep12256