研究課題/領域番号 |
25400201
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
紙屋 英彦 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (50300687)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 統計数学 |
研究実績の概要 |
星型分布は,多変量正規分布を拡張したものとしてよく知られている楕円型分布を,さらに拡張したものである.この拡張は,楕円型分布における密度の等高線としての楕円を,より一般の星型集合まで許すことによる.星型分布は非常に柔軟なモデルではあるが,実際のデータ解析においてすぐに利用できるようなところまでは,これまでに方法論が展開されていなかった.星型分布は,本研究課題で一般的な枠組みで導入した分布族の特殊ケースではあるが,この特殊ケースに限れば,一般的な枠組みでは扱えなかったより具体的な問題も扱える可能性がある.星型分布に対してそのような問題を解決することも,本研究課題の目的の一つとされていた.星型分布において特に扱いたいのは推測であるが,星型分布において最も重要な推測問題は,星型分布を導入した趣旨から考えて,密度関数の等高線としての星型集合(の境界)の形の推定である.この星型集合の形の推定の問題について,昨年度から研究を開始したが,今年度はそれをさらに,以下に述べるようなところまで推し進めた. とりあえず位置ベクトルはゼロという設定において,密度の等高線の形をノンパラメトリックに推定する問題を考察しているが,昨年度は,星型分布の下での通常の方向ベクトルの分布をノンパラメトリックに推定することによって星型集合の形を推定する方法を考案し,シミュレーションを行った. しかし昨年度は,考案した推定方法の理論的な性質の考察を行うには至らなかった.今年度はこの理論的な考察を行った.具体的には,考案した推定方法が,ハウスドルフ距離に関して強一致性を持つことを証明した.ここで得られた結果は,Estimation of the shape of the density contours of star-shaped distributions というタイトルの論文にまとめ,arXivに公表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
群不変性の一般的な設定での分布族の提案とその性質の考察に関して,本研究課題において平成25年度に執筆し,その後,査読付き学術雑誌にアクセプトされ,Accepted Author VersionがOnline上で公開されていた論文が,今年度,正式に公刊された.また,昨年度は方法の考案とシミュレーションによる分析を行い,その理論的な性質の考察が今年度の課題となっていた星形分布の星型集合の推定問題について,ある程度の解決(強一致性の証明)ができたが,収束の速さなど,より詳しい理論的考察ができれば,さらによかったため.
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今後の研究の推進方策 |
星型分布の星型集合の推定について,収束の速さなど,理論的により詳しい分析が可能であれば行いたい.また提案した方法の実際の性能を,より詳しいシミュレーション分析で確かめる.位置ベクトルが未知の場合やパラメトリックな推定も考察し,現実データへの応用も行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集や研究打合せのための出張が当初予定していたほど出来なかったため.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は,情報収集のための出張費・図書購入費や,成果の取りまとめと成果報告のための物品購入費・出張費などに用いる.
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