研究課題/領域番号 |
25400203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
桔梗 宏孝 神戸大学, その他の研究科, 教授 (80204824)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ジェネリック構造 / モデル完全 |
研究概要 |
Hrushovskiの融合法で構成されるある種のジェネリック構造について、それが満たす公理系がモデル完全になることを証明した。モデル完全性は応用上も重要なモデル理論における基本概念である。Hrushovskiの融合法で構成されるジェネリック構造の満たす公理系はモデル完全に近い性質をもつことが知られている。しかしながら、モデル完全にならない場合が多いことも知られている。Hrushovskiが構成した非可算範疇的(初等同値な同じ大きさの非可算モデルは同型)になるものについてはモデル完全になることが知られていたが、それ以外の場合はまだ研究されていないようである。それに対し、可算範疇的(初等同値な可算モデルは同型)になる場合についても、モデル完全性をある程度の一般性をもって示すことができた。今回考えたものは、グラフ理論でいう3超グラフである。このような有限構造Aに対し、|A|を頂点の個数、e(A)を A の3超辺の個数とし、δ(A) = |A| - e(A) という次元関数を考える。K_H = {A | (|A|, δ(A))∈H} というクラスを少し修正したものから作られるジェネリック構造を対象として考察した。Hが y ≧ log_3(x+1) のように定義される領域の場合について、そのジェネリック構造がモデル完全になることを示した。log のように上に凸で非有界な関数 h(x) に対し、H が y ≧ h(x) で定義される領域で、x, yが整数のとき、(x, y)∈Hならば(2x+1, y+1)∈Hをみたす場合に上のことを示すことができた。似た手法でさらに多くの場合にもモデル完全性が示せることが期待される。これに関連する結果は2013年9月の13th Asian Logic Conference および2014年3月の日本数学会年会において発表し、現在投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的は、ジェネリック構造と呼ばれる構造のモデル理論的な性質を調べることである。基本的な知見の整理を行ったところ、ジェネリック構造の満たす公理系はモデル完全性に近い性質をもつにもかかわらず、多くの場合にモデル完全にならないという結果があることを認識した。非可算範疇的な場合の例においては、モデル完全になる証明が発表されている。これはリンドストレームの定理を使って証明がなされている。可算範疇的な場合は、リンドストレームの定理を使おうとしても、自然に直接証明が得られそうに思い、実際、それに成功した。最初は具体的な場合においてであるが、ある程度の一般性をもった証明を与えられた。モデル完全になる場合でも、公理系が単純の場合も非単純の場合もありうることもわかった。このことは当初から予想していたことではないが、基本的な問題であるけれどもよい結果と考えられる。似た方法でモデル完全性がわかる場合がまだかなりありそうである。ジェネリック構造を構成するためのもとのクラスにおいて拡大関係がどのようになっているか詳しく調べる方法が一つ得られたことになり、今後の研究に貢献することが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
可算範疇的(初等同値になる可算モデルがすべて同型になるということ)なジェネリック構造のモデル完全性を示すにあたり、もととなる融合クラスにおいて、Aの拡大構造Bについて(|B|, δ(B))の値を先に決めておいて拡大できるかを考える必要があった。このような細かい議論はこれまでなされてなかったように思われる。この研究の大きな目標はジェネリック構成法により新しい種類の構造を作ることにあるが、可算範疇的な場合にこのような細かい議論を積み重ねていくことにより、ジェネリック構造の飽和性などをうまくコントロールできるようになる可能性が広がることが期待される。モデル完全になる場合はまだあまり知られておらず、前年度に使った手法を改良して、さらに別の場合にもモデル完全性を示せることが期待できる。この研究も積極的に行いたい。 前年度と同様に法政大学、神戸大学、筑波大学のいずれかにおいて連携研究者と研究打ち合わせを行なうことを基本とする。5月に米国バークレーにあるMSRIにおけるモデル理論の研究集会に参加し、様々な知見を得る予定である。さらに国内外の研究集会に参加し、研究打ち合わせを行なう。海外の研究者も国内に呼びたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
東京への研究打ち合わせ旅費への支出が主な使い方であるが、残りの額が一回の出張に必要な額を下回る額になったため、そのまま次年度に繰り越して使わせていただくことにした。 次年度における研究打ち合わせ旅費の一部として使用させていただく予定である。
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