混合効果モデルのひとつであるランダム効果モデルにおいて、二標本問題でのプロフィール分析を欠測データがある場合について推測法を与えた。欠測には単調性を仮定し、実用場面にも適用できるよう考察した。平行性の検定では、従来、一様共分散構造をもつ多変量正規母集団の平均の推測に対して提案されていた近似によらない方法を直接適用した手順を与えた。しかし、この手順では観測値の一部分を使用しないという欠点があるので、それを克服する方法を提案し、提案した方法による検出力が従来の方法を直接適用した手順より大きいことを示した。また、平行性のもとでの水準差の信頼区間の構成において、用いられる統計量に2つの分散推定量の最大値が現れ分布の導出が困難であったため、統計量の分布を近似的に与えた。そして、構成した信頼区間の近似精度をシミュレーションにより検証し、おおむね近似が良好であることであり、特に誤差分散とランダム効果の分散の値が近いときに良好な近似であることがわかった。数値例として、肥満患者のコレステロールの経時データのプロフィール分析を与えた。 矯正歯科学においては、28人の女性患者の臨床データをもとに、ミニインプラントの失敗の要因をロジスティック回帰により検証し、失敗に影響すると思われる要因を推測した。インプラントの失敗の要因として考えられる骨の性質、近接した歯の角度などの項目について検討し、さらには、その部位へのストレスの強さや角度などの要因についての考察もした。また、矯正歯科学において、重要となる測定誤差をもつモデルの統計解析についても成果を得つつある。
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