研究課題/領域番号 |
25400212
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田端 正久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30093272)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数値解析 / 収束性と安定性 / オセーン方程式 / ナヴィエ・ストークス方程式 / 特性曲線有限要素 / 二流体問題 / 圧力安定化法 |
研究概要 |
1.オセーン方程式はナヴィエ・ストークス方程式を線形化した方程式である.オセーン方程式に対して,流速と圧力をともに,三角形1次要素(2次元問題のとき)あるいは,四面体1次要素(3次元問題のとき)を用いて近似する圧力安定化特性曲線有限要素近似スキームを開発した.時間刻みと有限要素サイズを小さくしたときに,これらの間に制約条件を課すことなく,最良の次数で有限要素解が厳密解に収束することを証明した.更に,この結果を拡張して,ナヴィエ・ストークス方程式に対しても,同じ要素を用いる圧力安定化特性曲線有限要素スキームを開発した.ナヴィエ・ストークス方程式では,非線形項があるために,時間刻みと有限要素サイズを無条件に取ることができず,ある安定性の条件が必要になる.この条件の下で,最良次数で有限要素解が厳密解に収束することを証明した.これらの開発したスキームの数値計算を行い,理論的収束精度が得られることを確認した. 2.特性曲線有限要素法に現れる合成関数項の積分値を厳密に求めることはできない.通常,数値積分が用いられる.そのとき,生じる誤差が数値計算結果に大きな影響を与えることがあることが知られている.この問題を解決するために,合成関数項の厳密な積分値を得ることが常に可能になるように,元の流速を近似流速で置き換える方法を開発した.この置き換えによって生じる誤差は,有限要素近似から生じる本来の誤差で評価でき,有限要素解の収束次数を損なわない.このアイデアに基づき,移流拡散方程式に対して,数値計算スキームを開発し,三角形1次要素,三角形2次要素で,最良次数の収束結果が得られることを証明し,数値計算でこの方法の有効性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題「ガレルキン特性曲線有限要素法による数値解析の展開」を達成するために主要な点は,理論的側面と実践的側面から次の事項である. 理論的には,ガレルキン特性曲線有限要素解の収束性をナヴィエ・ストークス方程式に対して証明することが基本である.これは,流速と圧力を三角形2次要素と三角形1次要素で近似するなど,通常の混合近似においてはすでに確立されていたが,我々は,流速と圧力を共に三角形1次要素で近似する圧力安定化スキームで証明することに成功した.三角形1次要素は計算量の観点から,非常に優れた要素であり,この要素を特性曲線有限要素法に用いることの正当性を示すことができた意味は大きい. 特性曲線有限要素法は強力な数値的手法であるが,他の方法とは異なり,合成関数項の積分が必要になる.過去の特性曲線有限要素法の理論的結果は,この合成関数項の積分値を厳密に得ることができるとして証明されたものである.しかし,この合成関数項の積分を厳密に行うことは一般に不可能で,実際の計算では,数値積分が用いられる.そこで生じた誤差が,数値計算結果全体に悪影響を及ぼし,理論的結果が得られない問題があった.我々は,この合成関数項の積分値を厳密に得ることができる近似流速手法を開発し,移流拡散方程式に対して,以前の理論的結果が常に成立することを示した.ガレルキン特性曲線有限要素法の実践において,克服すべき課題が解決されたと考えている. ナヴィエ・ストークス方程式に対してこの手法の正当性を示すことは次になされるべきことである.これらの準備の後に,近似流速法を用いるガレルキン特性曲線有限要素法を,二流体問題などに適用する.以上の観点から,研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
1.数値積分を必要としない近似流速法をナヴィエ・ストークス方程式に適用する.特性曲線有限要素法に現れる合成関数項の積分に近似流速法を用いて,移流拡散方程式で成功した結果を,ナヴィエ・ストークス方程式でも実現する.時間刻みと有限要素サイズとの間に安定性条件が必要になるが,その条件の下で,数値積分誤差の搬入の恐れなく,常に,収束性の保証された数値計算を得ることができるようになる. 2.圧力安定化特性曲線有限要素スキームに対して,1で述べた近似流速法を導入し,ナヴィエ・ストークス方程式に対して収束性を示す.このスキームは,三角形1次要素,あるいは,四面体1次要素を流速・圧力ともに使うので計算量が比較的軽減され,大規模実用計算に適している.上述のように,時間刻みと有限要素サイズとの間に安定性条件が必要になり,時間刻みに制約が生じるが,熱方程式を陽的に解くときに要請されるような厳しい制約条件ではないので,計算量の軽減さは維持される. 3.近似流速法を用いた圧力安定化特性曲線有限要素法を応用する.開発した新しいガレルキン特性曲線有限要素法を用いて,単一流体問題と二流体問題を解く.単一流体問題は単一のナヴィエ・ストークス方程式で記述される問題であり,二流体問題はナヴィエ・ストークス方程式に支配される複数の流体問題であり,その界面では表面張力を考慮する.2次元問題の界面は閉曲線であるが,3次元問題では閉曲面である.界面の数値計算には界面追跡法を用いる.2次元問題で閉曲線の移動に関してはすでに計算手法を開発しているが,3次元の閉曲面の移動アルゴリズムの準備をする必要がある.この後に,流速,圧力に安定化四面体1次要素を使うガレルキン特性曲線有限要素スキームを作成し,二流体問題の数値シミュレーションを実践する.
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた出張日程が短縮されたため. 本年度の研究計画全体の中で使用する.
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