研究課題/領域番号 |
25400216
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 山口東京理科大学 |
研究代表者 |
井上 啓 山口東京理科大学, 工学部, 准教授 (70307700)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カオスの定量化 / カオス応用 / カオスの情報論的アプローチ |
研究概要 |
平成25年度は、エントロピー型カオス尺度(以下、カオス尺度と略)の解析的性質とカオス尺度とリアプノフ指数との関係に関する研究を中心に進めた。まず、カオス尺度の解析的性質を調べるにあたっては、軌道の初期確率分布と同時確率分布を軌道の情報により設定する必要がある。このとき、カオス尺度の値は軌道の領域の有限分割の仕方に依存する。そのため、後の計算における利便性を考慮して分割領域を等分割な正方領域として設定して解析的性質を導出した。その結果、不動点や周期軌道ではカオス尺度の値は0の値を取り、カオス軌道の場合は正の値を取ることを解析的に確認した。また、カオス尺度とリアプノフ指数との関係については、2進変換やテント写像等で生成される典型的なカオス軌道に対しては、カオス尺度とリアプノフ指数の間に成立する関係式を導出することができた。しかし、当初懸念していたように、準周期軌道に対してはカオス尺度とリアプノフ指数の間の明確な関係を導くことができなかった。その理由は、カオス尺度が準周期軌道に対して正の値を取ってしまうことにある。このことは、カオス尺度のみでは準周期軌道とカオス軌道の区別が難しいことにもつながるため、準周期軌道を区別するための補助的な指標を導入した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題における平成25年度の実施計画にしたがって、カオス尺度の解析的性質について調べた。また、ある条件の下において、カオス尺度とリアプノフ指数の関係式の導出に成功した。また、準周期軌道の取り扱いおいて、準周期軌道とカオス軌道を区別するための補助的な指標を導入することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度において、カオス軌道と準周期軌道を区別するための補助的な指標を導入したので、その効果について検証したいと考えている。また、平成26年度の実施計画にしたがって、実際的な非線形モデルに対して、カオス尺度によるカオスの定量化の研究に取り掛かりたいと考えている。具体的には、実際の現象を簡略化したモデルの一つである多重パイこね変換のカオス尺度による特徴付けを進めていく予定である。この写像は、パイをこねる操作を表す変換(パイこね変換)に加えて、パイこね変換が適用される領域が鎖状に並べられ複数の領域を行き来するように設定された3次元写像である。この多重パイこね変換は、筒状の容器に両端に温度差のある水(流体)を閉じ込めたときの粒子の振る舞いを簡略化したモデルである。実際の拡散方程式に比べるとかなり簡略化したモデルであるが、実際の状況を想定して筒状の容器に境界があると仮定すると、境界条件により様々な状況が発生し、リアプノフ指数の計算が困難な状況となる。このようなリアプノフ指数の計算が困難な多次元の非線形モデルにおいて、カオス尺度によるカオス解析を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していなかった国際会議(国内開催)への参加・発表もあったが、概ね、予定通りに予算執行することができた。次年度使用額(2円)は消耗品購入における端数部分である。 次年度使用額はごく僅かであり、使用計画の変更は必要ないと考えている。
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