研究課題/領域番号 |
25400219
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石渡 正樹 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90271692)
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研究分担者 |
中島 健介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (10192668)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 気候 / 同期回転惑星 / 太陽定数 / 暴走温室状態 / 大気大循環モデル / 射出限界 / 惑星半径 |
研究実績の概要 |
本研究課題では, 系外惑星における生命存在可能性を規定する暴走温室状態の発生条件を明らかにすることを目的としている. そのために, 雲スキームを組み込んだ大気大循環モデルを用いたパラメータ実験を実施し, 様々な自転角速度・惑星半径・日射分布に対して暴走温室状態が発生する太陽定数の臨界値を決定することを行なっている. 昨年度までに, 太陽定数を固定した場合における同期回転惑星設定を用いた自転角速度実験および惑星半径変更実験をおこなってきた. 平成 27 年度は本計画における中心的課題である太陽定数変更実験を実施した. 用いたモデルは, 惑星大気大循環モデル DCPAM (高橋他, 2013) である. 日射分布として, 昼半球と夜半球が固定された同期回転惑星を模した分布(同期回転日射分布)と日変化・季節変化が起こる地球的な分布(非同期回転日射分布)の 2 種類を用いた. 自転角速度として, 0 から地球の値まで変化させた 4 通りを用いた. 数値実験の結果, 同期回転日射分布を用いた場合には, 非同期回転日射分布を用いた場合に比べて, 暴走温室状態が発生する太陽定数が大きいことがわかった. 2 種の日射分布で得られるアルベドを比較すると, 同期回転日射分布を用いた場合の方が大きくなっていた. 同期回転日射の場合の方が, アルベドが大きくなるのは恒星直下点付近において雲水量が大きくなることによっている. 暴走温室状態が発生する太陽定数の値は日射分布・自転角速度・雲の有無によって異なるが, 太陽定数を増加させると全球平均外向き長波放射量はいずれの場合でも300 W/m2 程度になる. これより, 大気の赤外放射量の上限値が存在し, 全球平均日射吸収量がこれを越えると暴走温室状態が発生することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究開始時においては, 太陽定数を増大させた場合の数値計算が困難であることを危惧し, 数値計算を可能にするための方策を探ることに相当の時間を割くことを計画していた. しかし, 本計画においてこれまでに得られた結果から平衡状態が得られる場合における OLR の最大値から暴走温室状態が発生する太陽定数を決定することがわかってきたので, 太陽定数増大時における長時間積分を回避することができている. このため, 困難な数値実験を行なわずとも当初の目的であった暴走温室状態の発生条件の決定を行なうことができる見込みであり, 成果創出まで大幅に時間を短縮することが可能となっている.
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今後の研究の推進方策 |
上に述べたように, 研究計画は非常に順調に進んでいる. 研究開始時において計画してた研究の大半は実施することができており, 残るは様々な惑星半径を用いた場合における暴走温室状態の発生条件の考察である. 平成 28 年度はこの問題に取り組む予定である. 研究がこのまま順調に進めば, 当初計画していなかった問題にまで研究を拡張することができそうである. 研究拡張の方向として以下のものが考えられる. ● 陸惑星設定における暴走温室状態の発生条件の考察: 陸惑星とは, 表層に存在する水が地球に比較して極端に少ないため, 惑星全体が陸地である惑星を指す。新田他 (2014) は, 陸惑星設定 GCM 実験により, ハドレー循環の境界緯度における水蒸気量が暴走温室状態の発生条件を決定すると議論した. しかし, 新田他(2014)ではハドレー循環境界緯度に強く影響する自転角速度を変化させた実験は行なっていない. そのため, 自転角速度を含むパラメータを変化させた陸惑星設定 GCM 実験を行い陸惑星設定における暴走温室状態の発生条件に関する知見を深めることを目指す. ● 大陸配置を考慮した暴走温室状態の発生条件の考察:これまで行なわれた惑星気候のパラメータ研究においては, 海陸比の違いを考慮したものは少ない. 海陸比は気候の決定に大きく影響すると予想されるにもかかわらず, 海陸比を系統的に変化させたパラメータ実験はいまだ行なわれていない. そのため, 様々な仮想的大陸配置を与えた場合における太陽定数変更実験を行ない, それぞれの設定における大気構造を求めた上で暴走温室状態の発生条件の決定を目指す. この研究は, 系外惑星に存在する可能性のある気候状態のカタログ作成へと発展できる将来性がある. 平成 28 年度は研究の伸展具合を勘案しながら, 研究を拡張する方向を決定し, そちらに進むことにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
実際には執行済みのものが大学の財務会計上残っているため.
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次年度使用額の使用計画 |
既に執行済みである.
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備考 |
本研究で用いられた数値モデル群の公開、計算結果のアーカイブ、発表資源の公開を行っているサーバである。
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