研究実績の概要 |
本研究課題では, 系外惑星における生命存在可能性を規定する暴走温室状態の発生条件を明らかにすることを目的としている. そのために, 雲スキームを組み込んだ大気大循環モデルを用いて様々なパラメータに対する気候状態の依存性および暴走温室状態が発生する太陽定数の臨界値を決定することを目指している. 平成28年度と平成29年度にわたって惑星半径を変更した実験をおこなった. 用いたモデルは, 惑星大気大循環モデル DCPAM (高橋他, 2013) である. 平成28年度には日変化・季節変化が起こる地球的な日射分布を用いて惑星半径変更実験を行ない, 惑星半径を変更した場合の計算可能性に関する検討を行なった. その結果をもとに平成29年度において, 惑星半径として, 20000km, 6400km, 2000km の 3 通りのものを用いた実験を行なった. 惑星半径変更実験の検証を行なうために, 太陽定数を地球の値 (1366W/m2) に固定して地形がある場合と地形が無い場合についての計算を行なった. 検証後に太陽定数変更実験を行なう予定であったが, 暴走温室状態の発生条件を規定する南北熱輸送量の惑星半径依存性に関して興味深い問題が発見されたので平成29 年度はその調査をおこなうことにした. 惑星半径変更実験の結果, 惑星半径の増加に応じハドレー循環強度は大きく増加するのに対して, 南北熱輸送量は惑星半径が増大してもそれほど増加しないことがわかった. この結果は地形の有無によらず同様なものであることも確認された. このようなことが起こる理由を考察するため, 惑星半径に対する循環構造および南北熱輸送における顕熱輸送と潜熱輸送の内訳の変化を調査した. これにより, 南北熱輸送量のハドレー循環の緯度幅, 傾圧不安定擾乱の水平スケールなど複数の循環構造に応じて複雑に決まっていることが示唆された.
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