研究課題/領域番号 |
25400220
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大坪 貴文 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (50377925)
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研究分担者 |
石原 大助 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 講師 (30507835)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 黄道光 / 惑星間塵 / 赤外線観測 / あかり |
研究実績の概要 |
本研究では、赤外線天文衛星「あかり」の全天サーベイ観測データを基に、微細な空間構造まで再現したこれまでで最も詳細な太陽系内惑星間塵雲モデル・黄道光モデルを構築することを目指している。これは現在の標準テンプレートである米国のCOBE/DIRBEのデータを基にした黄道光モデルを15年ぶりに改訂するもので、モデルの精度を上げDIRBEでは再現できていなかった微細構造まで再現することに取り組むものである。 本年度は、本研究の基となる「あかり」遠赤外線全天イメージデータの一般公開までたどり着き、データの絶対値較正も一旦確定したため、これを基に半年ごとの全天観測マップを再作成し黄道光の微細構造の解析を進めた。観測衛星(地球)の位置によってその輝度が変化する黄道光モデルの構築では、半年ごとのデータで作成したこの全天マップ(半年マップ)が基礎となる。 遠赤外線データに関しては、異なる波長バンド間の差分マップを作成することで、銀河系内ダスト起源・銀河系外天体起源の放射の寄与を差し引き、黄道光放射の構造を正確に抽出する作業を進めた。その構造を簡易的なモデルでほぼ再現するところまで完了し、本年度中に論文化の作業に着手することができた。遠赤外線全天イメージから黄道光モデルを正確に差し引くことができれば銀河系内のダスト分布モデルの精度を格段に向上させることができる。現在は黄道光モデル差し引き後のデータ精度の検証を進めている。一方、中間赤外線データに関しては、DIRBRモデルとの比較をおこない「あかり」の観測データはDIRBEモデルでは再現できないことを明らかにした。現在は「あかり」のデータで惑星間塵の3次元空間分布に制限をつけ、ダストの物理的性質について検証をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は「あかり」遠赤外線全天画像データの一般向け公開のための作業に時間がとられたこともあり、作業工程のスケジュールを当初の予定と変更した部分もあるが、「あかり」全天観測イメージデータを基に半年毎の全天マップを作成し、全体として黄道光微細構造を抽出するところまではほぼ予定通りに進んでいる。遠赤外線・中間赤外線ともに、このまま黄道光輝度分布中のダストバンド構造の詳細解析を進め、来年度前半には結果をまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
遠赤外線データ、中間赤外線データともに黄道光輝度分布のモデル化に目処がついてきたので、今後はまずそれぞれのデータを基にした解析結果について論文化を進める。その後、両者の結果を総合し、両波長域の結果の間で矛盾がないかを検証する。幅広い波長域の複数の観測バンドを用いることで黄道光モデルのパラメータの最適化を進め、「あかり」観測データに基づいた惑星間塵の3次元空間分布モデルの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度内に解析と論文化の打ち合わせのためアメリカ渡航を予定していたが、お互いのスケジュール調整の結果、26年度ではなく27年度に変更した。また論文投稿に関して26年度末ではなく27年度にまとめておこなうことになったため、使用額に変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した分は27年度前半の打ち合わせ旅費として、また論文投稿費用として使用する。
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