研究課題
本研究は、日本の赤外線天文衛星「あかり」の中間・遠赤外線全天サーベイ観測データを基に、これまでで最も詳細な黄道光モデル・惑星間ダスト空間分布モデルを構築することを目指した。現在は、米国の衛星 COBE/DIRBE のデータを基にした黄道光モデルが標準テンプレートとなっているが、「あかり」のデータに基づくことで、その不完全な部分を補い15年ぶりに大幅に改良することが目的である。最終年度である本年度は、遠赤外線装置FIS、中間赤外線装置IRCの両方で半年ごとの全天画像を作成し、黄道光の空間分布を詳細に調べる作業を進めた。遠赤外線データに関しては、全天画像から銀河系内ダストと銀河系外の赤外放射の寄与を差し引き、黄道光中の小惑星ダストバンド成分と地球軌道上の周太陽リング成分の位置と表面輝度を正確に抽出することに成功した。また、これを基に黄道光の全天モデルを作成し、現在公開されている「あかり」遠赤外線全天画像から差し引くことで、表面輝度が暗い領域においても公開データの精度を大幅に改良することができた。この結果は本年度に論文として投稿し受理された。中間赤外線データに関しては、スムーズな大局構造をとらえることをメインとし、COBE/DIRBE モデルとの詳細な比較をおこなった。その結果、惑星間ダストの太陽からの距離に応じた分布は COBE/DIRBE のモデルで予想されたよりも 10% ほどコンパクトであるなど、太陽系内の空間構造に関して新たなことが明らかになった。この結果も本年度論文として投稿し出版された。本研究の過程で、これまでは見えていなかった微細な構造も見つかってきた。「あかり」のデータが必要な精度および微細構造を検出する能力を十分持つことが明らかになるなど、今後の惑星間ダストの三次元空間分布モデル構築に向けてはずみをつける意味でも、本研究は重要な意義を持つものであった。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件)
The Astronomical Journal
巻: 151 ページ: id.71 (11pp)
10.3847/0004-6256/151/3/71
Publications of the Astronomical Society of Japan
巻: 68 ページ: 印刷中
10.1093/pasj/psw024
巻: 68 ページ: id.17 (15pp)
10.1093/pasj/psv132