本研究では宇宙理論と計算科学、宇宙観測といった三つの研究分野を融合し、理論と観測の融合というキーワードを念頭に、銀河形成の輻射流体モデルの構築に取り組んでいる。そして、そのモデルを駆使して構築した銀河形成の理論模型と、ライマンアルファ銀河やライマンブレイク銀河等の遠方の銀河天体の観測データとの詳細な比較を行う。このような理論と観測の相互のフィードバックサイクルにより銀河形成・進化の標準模型を作り上げる。最終的に、多様な銀河宇宙を解読するための銀河系統樹を構築し、現在の銀河宇宙の成り立ちを解明する。 平成30年度は、銀河形成シミュレーションのための計算コードの開発を継続し、衝撃波や接触不連続面がシャープに解像することができる高精度流体力学計算コードによる実計算を実行した。また、ダークマターハローだけで構成されるようなダークサテライトと局所銀河群のメンバーである矮小銀河との銀河衝突シミュレーションを行い、マージャ―イベントと星形成の関係及びダークサテライトの存在可能性について豊かな知見を得ることができた。現在の標準天体形成パラダイムとなっているCDMモデルは、観測との対比する際にミッシングサテライト問題に代表されるような大きな矛盾を抱えている。本研究により、ダークサテライトの存在は、銀河形成に大きく寄与する可能性を示唆する結果を導き出す事に成功した。さらに、銀河形成期に発生するアウトフローを伴う星形成銀河の詳細な観測データと、我々の銀河風模型を比較することにより、その速度と星形成率、ダークマターハロー質量の関係について新しい理論模型を構築することに成功し、現在論文執筆中である。
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