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2013 年度 実施状況報告書

ALMAによる太陽型原始星の化学進化の探究

研究課題

研究課題/領域番号 25400223
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京大学

研究代表者

坂井 南美  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)

研究分担者 山本 智  東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード電波天文学 / 惑星起源 / 星間分子 / 星形成
研究概要

国際共同大型電波干渉計ALMAの初期運用(Cycle 0)で取得した低質量原始星L1527とIRAS 15398-3359のデータの解析を進めた。L1527については、c-C3H2などの不飽和炭化水素分子および一酸化硫黄分子の原始星まわりの分布が0.5-0.7”の空間分解能で明らかになった。その結果、不飽和炭化水素分子は、原始星の周りの回転しながら落下しているエンベロープに存在し、その運動の解析から、遠心力バリアの半径が明確に同定された。不飽和炭化水素分子は遠心力バリアよりも内側ではダストに吸着されるなどして気相には存在しないと見られる。一方、一酸化硫黄分子は遠心力バリアに張り付くようにリング状に分布していた。遠心力バリア付近では降着ガスによる弱い衝撃波が発生するので、それに伴いダストからSOが蒸発してきたと考えられる。遠心力バリアは原始星ディスクが形成される最前線である。この結果は、原始星ディスクの形成に伴って劇的な化学変化が起きていることを初めて示したもので、大きな意義がある。一方、IRAS15398-3359についてもALMAで取得したCCH, H2COのデータについて同様の解析を試みた。分子流の解析から、この原始星はエンベロープ/ディスクを横から見ている構造をとっていることを明らかにした。それにもかかわらず、中心70 AUでの運動速度が非常に小さいことがわかった。このことから、この原始星の質量の上限を与えることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

L1527において遠心力バリアでの化学組成の劇的変化を発見しNatureに発表するなど、研究は極めて順調に進展している。遠心力バリアの存在については、理論的に予想はされていたが、観測的に捉えられたのは初めてである。この成果は、原始星ディスクの形成に伴う化学進化の一大エポックを発見したのみならず、原始星ディスクの形成過程という星・惑星系形成の研究においても大きなインパクトを与えたと考えている。

今後の研究の推進方策

引き続き、ALMA Cycle0のデータ解析を進め、論文として発表する。L1527については、遠心力バリアを境にして、化学組成がどのように変化するかを総合的に把握する必要がある。すでに、CCH, CS, H2CO, CH3OHが取得されているので、それらがどのような分布をしているかを調べ、第二弾の論文として取りまとめる。一方、このような遠心力バリアの存在が他の天体でも見られるかどうかについては非常に興味がもたれる。IRAS 15398-3359の成果をとりまとめるとともに、他の天体についてもALMAなどを活用した観測を展開していくことを計画している。これらと並行して、エンベロープおよびディスクの物理モデルの構築も進め、観測データの解釈をより定量的に行うことができるよう、シミュレーションプログラムなどの開発を進める。

次年度の研究費の使用計画

本年度はALMA Cycle 0データで非常に重要な結果が得られたので、その解析と論文の取りまとめに集中した。国際会議での発表などを翌年度に持ち越したり、今後予想されるALMAデータに対応する計算機関連物品を最新のもので購入するなどのため、次年度使用が発生した。
平成26年6月にEarly Phase of Star Formation の国際会議がドイツのミュンヘン郊外で行われ、そこでの成果発表を予定している。また、L1527の観測で共同研究しているフランス、グルノーブルのグループとの共同研究のために渡航を予定している。さらに、ALMAデータの解析のため、最新の計算機システムを導入予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)

  • [雑誌論文] Change in the Chemical Composition of Infalling Gas Forming a Disk around a Protostar2014

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 507 ページ: 78-80

    • DOI

      10.1038/nature13000

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Anomalous13C Isotope Abundances in C3S and C4H Observed toward the Cold Interstellar Cloud, Taurus Molecular Cloud-12013

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry A

      巻: 117 ページ: 9831-9839

    • DOI

      10.1021/jp3127913

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Warm Carbon-Chain Chemistry2013

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 雑誌名

      Chemical Reviews

      巻: 113 ページ: 8981-9015

    • DOI

      10.102/cr4001308

    • 査読あり
  • [学会発表] A Drastic Chemical Change in Protostellar-Disk Formation: IRAS 04368+2557 in L15272014

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 学会等名
      日本天文学会2014年春季年会
    • 発表場所
      国際基督教大学
    • 年月日
      20140321-20140321
  • [学会発表] New carbon-chain chemistry found in solar-type star-forming regions2014

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 学会等名
      247th American Chemical Society National Meeting 2014
    • 発表場所
      Dallas Convention Center (USA)
    • 年月日
      20140316-20140316
    • 招待講演
  • [学会発表] A Drastic Chemical Change in Protostellar Disk Formation2013

    • 著者名/発表者名
      坂井 南美
    • 学会等名
      原始惑星系円盤研究会
    • 発表場所
      国立天文台・三鷹
    • 年月日
      20130821-20130821
    • 招待講演
  • [学会発表] Astrochemistry in Star/Planet Forming Regions2013

    • 著者名/発表者名
      N. Sakai
    • 学会等名
      ALMA Developement Workshop
    • 発表場所
      国立天文台・三鷹
    • 年月日
      20130709-20130709
    • 招待講演

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公開日: 2015-05-28  

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