現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IRAM 30 m電波望遠鏡による観測では、原始星天体の化学組成を系統的に調べる大型観測プログラムASAI (Astrochemical Survey at IRAM)をフランスチームと共同して立ち上げ、WCCC天体であるL1527のラインサーベイを推進した。炭素鎖分子が非常に豊富に存在していることを確認するとともに、炭素鎖分子の関連分子であるc-C3H2の13C同位体種やc-C3Hの重水素置換体の検出にも成功した。c-C3H2ではその12C/13C同位体比が炭素原子における存在比よりも大きくなっていること、2つの13C同位体種の12C/13C比が大きく異なることを見出した。この異常についての論文をとりまとめ、Astrophysical Journalに投稿中である。ALMAによる観測においては、L1527で検出した遠心力バリア近傍の温度、密度を推定するために、分子の統計平衡励起計算を行い、遠心力バリアの物理的性質を明らかにした。さらにその結果を用いて、CCH, c-C3H2, SO, CS, H2CO, CH3OHについて、遠心力バリアの内外で分布が異なることを定量的に示した。CCH, c-C3H2, CSは遠心力バリアの外側の回転落下エンベロープに存在し、SO, CH3OHは遠心力バリア付近に局在している。一方、H2COは全体に分布していることがわかった。このことは、遠心力バリアでの劇的化学変化の起源の理解に向けて重要な基礎を築いた。この成果については論文としてとりまとめ、Astrophysical Journal Lettersに出版した。このように、研究は当初計画通りに順調に進行しつつある。
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