研究課題/領域番号 |
25400224
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
生駒 大洋 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80397025)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 惑星形成 / 大気起源 |
研究概要 |
宇宙望遠鏡の稼働によって、地球半径の数倍以下という小さい系外惑星(スーパーアース)が検出され始めた。これまでに検出されたスーパーアースは岩石から成る惑星に比べて有意に大きな半径を持つ。これは、スーパーアースが厚い水素大気に覆われていることを示唆するが、その大気獲得過程に対する十分な理論的研究はない。本研究では、原始惑星系円盤ガスの獲得過程を精査し、スーパーアースの質量と半径の関係を理論的に推定し、さらに観測データと比較・検討することで理論を検証し、スーパーアースの形成過程を明らかにすることを目的としている。 平成25年度は主に2つのことに取り組んだ。一つは、マントルの冷却に伴う大気への熱供給を考慮した大気の熱収支およびそれに伴う重力収縮を追う数値計算プログラムの開発である。まず、状態方程式や放射特性などの物性に関して単純化した試作的なプログラムを作成し、それを用いて大気・マントル系の振る舞いを調べた。その結果、大気側のみ従来型のヘニエイ法で解いた場合、大気からマントルへの熱的なフィードバックによる数値的な振動を抑えることが困難であることが分かり、それに対応できるアルゴリズムを検討し作成した。一方、もう一つの検討事項として、観測との比較・検討のために、大気獲得後から現在までの熱進化と質量散逸過程を検討した。この過程では、質量減少と冷却が一方向であるので、上記の数値的振動は現れない。シミュレーションの結果、中心星から受ける高エネルギー輻射によって大気の一部は光蒸発によって流出することを示した。そして、現在の大気量と形成期の獲得量の違いとその関係を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円盤ガス中での大気獲得シミュレーションで、大気の冷却とマントルの冷却を同時に解いた例は世界的にも他にない。本年度の検討によって、システムの振る舞いは理解できたが、数値的な振動の問題が想定よりも大きかったため、プログラム開発については当初の予定に比べて若干の遅れがある。一方、次年度に予定していた大気散逸の影響評価を今年度に前倒して行ったため、来年度も引き続きプログラム開発に時間を割くことができる。総合すると、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度に検討した数値的振動を抑えるためのアルゴリズムを大気獲得計算プログラムに反映し組み上げる。そして、実際の形成環境を想定した大気獲得シミュレーションを行う。トランジットを起こすようなスーパーアースは中心星近傍に存在し、原始惑星系円盤内の対応する場所でのガス温度も高かったと考えられる。そのため、大気は重力的に弱く束縛されており、その構造は境界条件である円盤ガスの圧力や温度に敏感である。円盤ガスはいずれ散逸してなくなる。その過程での円盤ガスの圧力・温度変化に伴い、大気量も変化すると予想される。具体的には、円盤の圧力の低下に伴い大気は流出し、一度獲得した大気の一部を失う。そこで、円盤散逸時のガス圧力・温度の変化をモデル化し、それがスーパーアースの獲得する大気量に与える影響を評価する。円盤散逸に関しては、広く用いられている「2段階散逸モデル」(粘性散逸+光蒸発)に基づいた1次元モデルを採用する。一方、温度構造の進化については、ダストによる中心星光の吸収およびガス分子との衝突と分子による赤外放射を組み合わせてモデル化する。それらを用いて円盤散逸の効果を定量的に評価した後、大気構造がモデルの不確定要素に敏感であることが分かった場合は、さらに円盤構造進化モデルの精密化を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画における小課題の取り組み順を入れ替えたため、当初の使用計画からの変更が生じた。予定していた国内出張のための旅費を次年度に回し、また今年度に受理された論文投稿料の支払が次年度に発生するため、その分も繰り越した。 論文投稿料として158,769円使用し、残りを国内学会での成果発表のための出張旅費に使用する予定である。
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