研究課題/領域番号 |
25400224
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
生駒 大洋 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80397025)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 系外惑星 / 大気形成 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、昨年度に開発したアルゴリズムに基いて、原始惑星系円盤に接続した惑星大気の重力収縮および円盤ガス流入を追う数値計算プログラムを構築した。そして、それを用いて、散逸しつつある円盤ガスの中で、スーパーアースがその場で獲得できる大気量を、様々な惑星質量や円盤を特徴づける量について調べた。さらに、円盤消失によって惑星へのガス流入が終わった後、長期間の大気の重力収縮を計算し、数十億歳のスーパーアースの半径を理論的に予測した。それを、これまでに測定されているスーパーアースの質量と半径の観測値と比較した結果、これまでに観測されているスーパーアースの多くは本研究による理論予測と矛盾しないが、いくつかの惑星については理論予測値よりも半径が大きく、整合的でないことがわかった。 その一つの原因は大気組成にあるかもしれない。上の調査では、大気組成として常に太陽組成(つまり、水素とヘリウムが99%)を仮定している。一方、現実的には、同時に起きうる微惑星集積によって、大気に炭素や酸素が供給される可能性がある。そこで、大気組成の違いが大気量に与える影響を定量化した。その結果、炭素や酸素が増加することによって、大気量自体が増加することが示され、上述の非整合性を解決しうる可能性があることがわかった。この結果は論文としてまとめ、すでに学術雑誌への掲載が決まっている。 また、今年度は、国際研究集会において当該研究課題に関連した口頭発表を3回行った。そのうち2回は招待講演である。さらに、当該研究課題に直接関係する太陽系内外の惑星の原始大気の形成過程に関する招待レビュー論文(Space Science Reviewに投稿予定)を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低密度スーパーアースの存在は2009年頃から認識されており、低密度である原因の一つとして、原始惑星系円盤を起原とする水素・ヘリウム大気の存在が考えられてきた。それに対して、どの程度の大気量であればスーパーアースの質量と半径の観測値を説明できるかについては研究がなされてきた。しかし、本研究課題のように、形成論の観点から大気獲得量を予測し、さらに十億年スケールの重力収縮を追って得られた半径の理論予測値と、実際のスーパーアースの観測値とを比較した研究例はない。上述のように、すべて観測値をまだ説明できているわけではないが、それは次年度の課題であり、現時点では概ね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究によって、スーパーアースの半径の理論予測値と観測値が必ずしも整合的でないことが分かった。その一つの大きな原因として惑星形成過程の単純化が挙げられる。今年度の調査では、ある質量の固体惑星が中心星近傍のある場所で瞬間的に生まれ、その後は微惑星集積による惑星の成長も、惑星の移動も起きず、その場で円盤ガスを獲得すると仮定した。しかし、現実的には、微惑星の集積とガスの集積は同時期に起こり、さらに必ずしも現在の場所で形成されるわけではない。そこで、当初の計画通り、微惑星の集積や惑星の移動も含めた惑星形成統合モデルを構築し、様々な解の集団の中で低密度スーパーアースが存在しうる確率を調べ、現在の観測との整合性を確認する。特に、今年度の取り組みの一部で明らかになった、獲得大気量の大気組成に対する依存性に着目する。本年度は大気組成をパラメータとして扱ってきたが、次年度は大気組成を変化させる機構(微惑星による大気汚染やマグマオーシャンとの反応)を考慮した統合モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学術雑誌 ApJ に受理された論文の投稿出版料請求が次年度になったため,翌年度に繰り越した.
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次年度使用額の使用計画 |
当該論文の投稿出版料として使用する.
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