研究課題
平成28年度は、昨年度に発見したマグマオーシャンの酸化物と大気中の水素との反応によってもたらされる水蒸気が大気構造と大気量を大幅に変えるというフィードバック効果について、それが有効に働く条件を理解するために、さらなる検討を行った。結果として、マグマオーシャンと大気の反応で水が生成される場合は、マグマオーシャン深部から表面への酸化鉄の供給が十分に起こる必要があると同時に、大量に熱が運ばれてしまうため、大気を失ってしまうことがわかった。そのため、上記のフィードバック機構が働く条件は限定的である。一方、集積する微惑星が小さい場合、大気中で酸化鉄を放出するため、このフィードバック機構がよく働くことが明らかになった。研究期間全体を通して、短周期スーパーアースの円盤ガス獲得量を定量化することに成功した。特に、マグマオーシャンと大気の共進化に着目し、両者がシステムとして振る舞うことの重要性が示された。また、円盤ガスの元々の成分である水素・ヘリウムに、微惑星からの揮発性成分や酸化鉄からの酸素が混合することは、単なる物理的な混合ではなく、大気構造を大きく変え、結果的に大気量に多大な影響を及ぼすことを明らかにした。これは、これまでにトランジット観測で発見されている低密度スーパーアースの存在と整合的である。本研究課題で構築した理論を検証するためには、トランジット測光観測に加えて、大気成分を知るための分光観測が重要であることが示唆された。
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Space Science Reviews
巻: 205 ページ: 153-211
10.1007/s11214-016-0280-1