研究課題
基盤研究(C)
本研究の目的は、分子雲クランプ内部でどのように星団形成が起きるのかミリ波サブミリ波帯のスペクトル線観測によって明らかにすることである。星団形成領域である分子雲クランプG34.43+00.24 MM3を、ALMA望遠鏡によって観測し、星団形成に関する重要な情報を得た。さらに新たな70 GHz帯SIS素子の設計、製作も行うことができた。G34.43+00.24 MM3は、赤外線暗黒星雲であり、まだ活発な星形成を起こしていない分子雲クランプと考えられていた。そのような領域をALMA望遠鏡で高分解能観測を行った結果、この分子雲クランプ内部に生まれたばかりの原始星を発見した。分子流の年齢から、原始星が誕生してから740年以下と非常に若い天体であることがわかった。さらに、原始星周囲のホットコアと呼ばれる高温(>100 K)領域の大きさが、典型的な低質量星のそれに比べ有為に大きいことがわかった。年齢が若いにも関わらず、大きなホットコアを持つことは、この原始星が典型的な小質量星とはことなるメカニズムで誕生していることを示唆している。大きなホットコアを持つ要因として、高い質量降着率や複数の原始星が誕生していることが考えられる。今後、この天体に対して高分解能観測を行うことで、星団形成領域における個々の星形成の描像を得ることができると期待される。さらに、G34.43+00.24 MM3において、広がったCH3OH輝線が見られた。これは、過去の星形成活動の影響によるものと考えられ、若いと考えられていたG34.43+00.24 MM3が、既に活発な小質量星の形成を経験していたことを意味している。この結果は、星団形成において小質量星が先にできることを示唆しており、星団形成過程を考える上で重要な知見と言える。
2: おおむね順調に進展している
研究実績に示したように、星団形成領域であるG34.43+00.24に対するALMA望遠鏡の観測から、星団形成に関する重要な知見を得た。さらに、野辺山45m望遠鏡用の70 GHz帯受信機も新たな受信素子の設計を行い、素子製作を行うことができた。おおむね順調に進展していると考えている。
今後は、特に分子雲クランプ内部の重水素濃縮度に着目し、研究を進めていく。まず、電波干渉計による高分解能観測で、重水素化物輝線の放射領域を特定する。それによって、分子雲クランプ内部の重水素濃縮度分布を明らかにする。星団領域内部での星形成と重水素濃縮度との関係を明らかにし、分子雲クランプ内部で星形成が起きる前の重水素濃縮度を見積もる。これによって、星団形成領域における星なしコアのタイムスケールをより正確に理解する。また、いくつかの天体に対して観測を行い、重水素濃縮度の多様性の起源を解明する。さらに、開発を行った70 GHz帯SIS素子を野辺山45m望遠鏡に搭載し、重水素化物輝線の観測を行う。数十天体に対するサーベイ観測を行うことで、今後高分解能観測を行う候補天体の数を増やす。新たな受信素子の搭載は9月までに行い、観測は12月以降に行う。
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