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2014 年度 実施状況報告書

化学組成から探る星団形成初期の分子雲分裂過程とその多様性

研究課題

研究課題/領域番号 25400225
研究機関電気通信大学

研究代表者

酒井 剛  電気通信大学, 情報理工学(系)研究科, 助教 (20469604)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード星団形成 / 電波天文 / 分子雲 / 星形成
研究実績の概要

本研究の目的は、分子雲クランプ内部でどのように星団形成が起きるのかミリ波サブミリ波帯のスペクトル線観測によって明らかにすることである。
星団形成領域である分子雲クランプG34.43+00.24 MM3に対し、ALMA望遠鏡を用いCH3OHメーザーの観測を行った。観測の結果、原始星から吹き出した分子流と周囲の冷たいガスが衝突した領域でCH3OHメーザーが励起されていることがわかった。このようにCH3OHメーザーと周囲のガスとの関係を観測的に明確に明らかにすることができたのは、この結果が初めてである。さらに、衝撃波をよくトレースするSiO輝線が検出されないメーザー源もあることがわかった。このことは、CH3OHメーザーが弱い衝撃波、もしくは古い衝撃波もトレースする可能性を示唆している。CH3OHメーザーが分子雲クランプ内での星形成活動を理解する上で重要な指標になることを示した。
また、これまでの野辺山45m望遠鏡による観測から、G34.43+00.24 MM3では、DNC/HNC比が他天体に比べ有意に低いことがわかっていた。G34.43+00.24 MM3に対する、ALMA望遠鏡を用いたDNC、HN13C輝線の観測結果について解析を行った。その結果、ALMA望遠鏡による高分解能観測では、分子雲内部にDNC/HNC比が高い領域が存在することがわかった。これは、ALMA望遠鏡では、分子雲内部の高密度かつ重水素濃縮度の高い領域のみを観測しており、一方、野辺山45m望遠鏡では密度の低い広がった成分を主に観測しているためと考えられる。さらに、原始星近傍の温度の高い領域で、DNC/HNC比が高いこともわかった。このことは、DNC/HNC比が、星形成による温度上昇によってすぐに減少せず、星形成前の低温期のDNC/HNC比を保持しているためと考えられる。DNC/HNC比が分子雲クランプ内部でのコア形成過程を理解するために重要な指標となることを観測的に示すことができ、今後につながる重要な結果である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績に示したように、星団形成領域であるG34.43+00.24に対するALMA望遠鏡の観測から、星団形成に関する重要な知見を得た。特に、星団形成領域におけるDNC/HNCの振る舞いについて明らかにすることができた点は、今後にもつながる大きな進展であった。さらに、野辺山45m望遠鏡70 GHz帯を用いた、DCO+/HCO+輝線のサーベイ観測も行っており、現在、結果をまとめているところである。研究は、おおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

これまでの観測から、DNC/HNC比の星団形成領域における振る舞いについて理解することができた。今後は、DNC/HNC比を用い、大質量星形成を伴う別の分子雲クランプ内部でのコア形成過程について、電波干渉計を用い観測的に明らかにする。さらに、DCO+/HCO+比の振る舞いについても、野辺山45m望遠鏡の観測結果をモデル計算の結果と比較することで調べる。DNC/HNC比とDCO+/HCO+比を比較することで、イオン分子と中性分子の重水素濃縮度の違いも明らかにする。これらの結果をもとに、星団形成の多様性について観測的に明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

国外研究会への参加旅費を別経費から出すことが可能になったため、その分を次年度にまわすことにした。

次年度使用額の使用計画

次年度使用可能額は、759,448円である。日本天文学会への参加旅費として5万円使用し、国外研究会参加費として30万円使用する。論文の掲載料として20万円使用する。その他、209,448円は、野辺山45m受信機の性能向上に必要なコネクタや導波管などの消耗品購入にあてる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] ALMA Observations of of the IRDC Clump G34.43+00.24 MM3: DNC/HNC Ratio2015

    • 著者名/発表者名
      Sakai, T., Sakai, N., Furuya, K., Aikawa, Y., Hirota, T., Foster, J. B., Sanhueza, P., Jackson, J. M., Yamamoto, S.
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 803 ページ: id. 70

    • DOI

      10.1088/0004-637X/803/2/70

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] ALMA Observations of of the IRDC Clump G34.43+00.24 MM3: 278 GHz Class I Methanol Masers2014

    • 著者名/発表者名
      Yanagida, T., Sakai, T., Hirota, T., Foster, J. B., Sanhueza, P., Jackson, J. M., Furuya, K., Aikawa, Y., Yamamoto, S.
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal Letters

      巻: 794 ページ: id. L10

    • DOI

      10.1088/2041-8205/794/1/L10

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] DNC/HNC Ratio in Molecular Clumps2015

    • 著者名/発表者名
      Sakai, T., Sakai, N., Furuya, K., Aikawa, Y., Hirota, T., Foster, J.B., Sanhueza, P., Jackson, J. M., Yamamoto, S.
    • 学会等名
      The Soul of High-Mass Star Formation
    • 発表場所
      Puerto Varas, Chile
    • 年月日
      2015-03-16 – 2015-03-20
  • [学会発表] DNC/HNC Ratio in the IRDC clump G34.43+00.24 MM32014

    • 著者名/発表者名
      Sakai, T., Sakai, N., Furuya, K., Aikawa, Y., Hirota, T., Foster, J.B., Sanhueza, P., Jackson, J. M., Yamamoto, S.
    • 学会等名
      Workshop on Interstellar Matter 2014
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2014-10-16 – 2014-10-18
  • [学会発表] ALMAによるIRDC clump G34.43+00.24 MM3に対するDNC/HNCの観測2014

    • 著者名/発表者名
      酒井剛, 坂井南美, 古家健次, 相川祐理, 廣田朋也, Jonathan B. Foster, Patricio Sanhueza, James M. Jackson, 山本智
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
    • 発表場所
      山形大学
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13
  • [学会発表] ALMA望遠鏡によるIRDC Clump G34.43+00.24 MM3に対するClass I CH3OH メーザーの観測2014

    • 著者名/発表者名
      柳田貴大,酒井剛,廣田朋也,坂井南美,Jonathan B. Foster, Patricio Sanhueza,James M. Jackson,古家健次, 相川祐理,山本智
    • 学会等名
      日本天文学会秋季年会
    • 発表場所
      山形大学
    • 年月日
      2014-09-11 – 2014-09-13

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公開日: 2016-05-27  

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