研究課題
本研究の目的は、分子雲クランプ内部でどのように星団形成が起きるのか、ミリ波サブミリ波帯のスペクトル線観測によって明らかにすることである。そのため、ALMAを用いた高分解能観測と、野辺山45m望遠鏡用70 GHz帯SIS素子のIF広帯域化を行った。分子雲クランプG34.43+00.24 MM3に対して、ALMA望遠鏡を用いた高分解能観測を行った結果、この分子雲クランプ内部に生まれたばかりの原始星を発見した。分子流の年齢から、原始星が誕生してから10^3年以下と非常に若い天体であることがわかった。さらに、原始星周囲のホットコアと呼ばれる高温(>100 K)領域の大きさが、典型的な小質量星のそれに比べ有為に大きいことがわかった。年齢が若いにも関わらず、大きなホットコアを持つことは、この原始星が典型的な小質量星とはことなるメカニズムで誕生していることを示唆している。さらに、原始星周囲のホットコアでは、HCOOCH3、CH3OCH3、CH3CH2CNなど複雑な有機分子が多数検出された。複雑な有機分子の存在量を他天体と比較した結果、小質量星形成領域よりも、大質量原始星領域の組成により近いことがわかった。一方、D2COなどいくつかの分子については、大質量星形成領域であるOrion KL領域のホットコアと存在量に差が見られることがわかった。化学組成について、モデル計算を行った結果、初期の分子雲コアの形成タイムスケールの違いによってホットコアの化学組成が変化することがわかった。Orion KL領域との違いは、分子雲クランプ内部での分子雲コアの形成過程の違いを反映している可能性があり、分子雲クランプ内部での分子雲コアの形成の多様性を示唆する重要な結果が得られた。
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