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2013 年度 実施状況報告書

天体放射の時間変動から探る高エネルギー宇宙線

研究課題

研究課題/領域番号 25400227
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東京大学

研究代表者

浅野 勝晃  東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (80399279)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードガンマ線バースト / 活動銀河核ジェット / 粒子加速 / 最高エネルギー宇宙線 / 高エネルギーニュートリノ / X線・ガンマ線
研究概要

本課題の目的は「高エネルギー天体の時間変動観測を時間発展シミュレーションに基づいて解釈し、高エネルギー宇宙線生成のメカニズムを探る。同時に、謎に包まれている高エネルギー天体現象の放射メカニズムを明らかにする」というものである。研究計画の研究テーマとして5つ挙げていたが、その内4つの課題について順調に研究が進み、論文として発表する事ができた。
我々はガンマ線バーストの光球モデルを時間発展シミュレーションによって、そのスペクトルの進化を詳細に調べた(課題2)。我々の結果が示すように、観測を説明するためにはプラズマの加熱率の時間発展を微妙に調整する必要があり、モデルとして必ずしも及第点に達しているとは言えないと考えている。
課題3と5に関連し、AGNの二次加速モデルを検討した。通常、二次加速モデルは、スペクトルが鋭くなりすぎ、観測と合わないと思われていた。しかし、プラズマの時間発展を考慮する事で、二次加速モデルは電波からガンマ線の広い帯域でスペクトルを説明できる、有力なモデルであることが明らかになった。
課題1としては、Fermi衛星がGRB130427Aという非常に明るいバーストを検出し、その議論に加わった。爆発後、9時間たってからの高エネルギー放射が確認され、GRB残光の標準モデルに疑問を投げかける、興味深い結果となっている。この結果は私がまとめた後に、フェルミ日本チームのHPにアップされている。
これらの成果に加えて、私の時間発展シミュレーションを用いて、厳密なGRB起源宇宙線とニュートリノの放射を計算した。GRBはニュートリノによる観測的制限をかいくぐり、最高エネルギー宇宙線の源として寄与できることが具体的に示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画に記した課題はほぼ全て今年度中に論文として出版された。その成果も、AGNの二次加速の重要性を指摘するなど、大変有意義なものであると考えている。

今後の研究の推進方策

現在、宇宙線研究所の修士の院生と、中性子星合体時の非熱的放射の研究を行っている。我々の時間発展シミュレーションは、スペクトルや光度の進化を精密に議論できるため、将来の電磁波による重力波対応天体探査の際、大きな武器になると考えている。また、フェルミバブルと呼ばれる、銀河の大きな(~10kpc)ガンマ線の構造を電子の二次加速を用いて説明しようと、もう一人の院生と共に研究を進めている。このバブルは銀河中心の過去の活動により、大きな泡状構造が銀河の上下に生まれ、そこで加速された粒子からガンマ線が放たれていると考えられている。ここでも衝撃波下流のプラズマの時間発展を取り入れることで、電波からガンマ線までにいたるスペクトルや輝度分布を説明できると考えている。多くの研究者は陽子起源のガンマ線モデルで説明しようと試みているが、我々のモデルは電波も説明しようと試みており、より包括的なモデルになりうるのではと考えている。
どれも大変時節を得た、興味深い課題だと考えている。

次年度の研究費の使用計画

10%ほどの金額が残っているが、これは年度末に切れてしまったプリンタ関係の消耗品費に既に大部分が使われている。また最新の論文の投稿料1110ドルは次年度に支払うことが確定している。
上記にあるように、すでに支出済みで、実質的に残額はない。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Neutrino and Cosmic-Ray Release from Gamma-Ray Bursts: Time-Dependent Simulations2014

    • 著者名/発表者名
      Katsuaki Asano and Peter Meszaros
    • 雑誌名

      Astrophysical Journal

      巻: 785 ページ: 54

    • DOI

      10.1088/0004-637X/785/1/54

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Time-Dependent Models for Blazar Emission with the Second-Order Fermi Acceleration2014

    • 著者名/発表者名
      Katsuaki Asano, Fumio Takahara, Masaaki Kusunose, Kenji Toma, and Jun Kakuwa
    • 雑誌名

      Astrophysical Journal

      巻: 780 ページ: 64(12pp)

    • DOI

      10.1088/0004-637X/780/1/64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fermi-LAT Observations of the Gamma-Ray Burst GRB 130427A2014

    • 著者名/発表者名
      M. Ackermann, M. Ajello, K. Asano et al.
    • 雑誌名

      Science

      巻: 343 ページ: 42-47

    • DOI

      10.1126/science.1242353

    • 査読あり
  • [雑誌論文] An Evaluation of the Exposure in Nadir Observation of the JEM-EUSO Mission2013

    • 著者名/発表者名
      J.H. Adams Jr. et al.
    • 雑誌名

      Astroparticle Physics

      巻: 44 ページ: 76-90

    • DOI

      10.1016/j.astropartphys.2013.01.008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Spatially Resolved Spectroscopy of a Pulsar Wind Nebula in MSH 15-562013

    • 著者名/発表者名
      Yoichi Yatsu, Katsuaki Asano, Nobuyuki Kawai, Yuki Yano, and Takeshi Nakamori
    • 雑誌名

      Astrophysical Journal

      巻: 773 ページ: 25(14pp)

    • DOI

      10.1088/0004-637X/773/1/25

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Photon and Neutrino Spectra of Time-Dependent Photospheric Models of Gamma-Ray Bursts2013

    • 著者名/発表者名
      Katsuaki Asano and Peter Meszaros
    • 雑誌名

      Journal of Cosmology and Astroparticle Physics

      巻: 09 ページ: 008

    • DOI

      10.1088/1475-7516/2013/09/008

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The First Fermi LAT Gamma-Ray Burst Catalog2013

    • 著者名/発表者名
      M. Ackermann, M. Ajello, K. Asano et al.
    • 雑誌名

      Astrophysical Journal Supplement

      巻: 209 ページ: 11(90pp)

    • DOI

      10.1088/0067-0049/209/1/11

    • 査読あり
  • [学会発表] ガンマ線バーストはUHECR源たりうるか?2014

    • 著者名/発表者名
      浅野勝晃
    • 学会等名
      Cosmic Neutrino PeVatron (NuPeV 2014)
    • 発表場所
      ホテル一宮シーサイドオーツカ(千葉県長生郡一宮町)
    • 年月日
      20140217-20140219
    • 招待講演
  • [学会発表] Acceleration and Emission in GRBs2013

    • 著者名/発表者名
      Katsuaki Asano
    • 学会等名
      Multi-Messenger Approaches to Cosmic Rays: Origins and Space Frontiers
    • 発表場所
      Institut d'Astrophysique de Paris (France)
    • 年月日
      20131127-20131129
    • 招待講演
  • [学会発表] 時間発展シミュレーションに基づいたGRBからのニュートリノ背景放射2013

    • 著者名/発表者名
      浅野勝晃、Peter Meszaros, Shan Gao
    • 学会等名
      日本物理学会2013年秋季大会
    • 発表場所
      高知大学
    • 年月日
      20130920-20130923
  • [学会発表] ガンマ線バーストからの逃走中性子とニュートリノ2013

    • 著者名/発表者名
      浅野勝晃、Peter Meszaros
    • 学会等名
      日本天文学会2013年秋季年会
    • 発表場所
      東北大学
    • 年月日
      20130910-20130912
  • [学会発表] High-energy neutrinos and gamma-rays from GRBs2013

    • 著者名/発表者名
      Katsuaki Asano, Peter Meszaros, and Shan Gao
    • 学会等名
      2013 Multi-Messenger Transient Astrophysics Workshop
    • 発表場所
      北京大学(中国)
    • 年月日
      20130506-20130510
    • 招待講演
  • [備考] Publications

    • URL

      http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/~asanok/publication.html

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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