研究課題
本研究課題は時間発展シミュレーションを用いて、天体での粒子加速、放射過程を明らかにすることを目的としている。最終年度で発表された論文において得られた結果は、以下の通りである。活動銀河核(AGN)ジェット由来の非熱的放射は、単純なベキ乗ではなく、曲がったスペクトルを見せ、我々が前年度に明らかにしたように、乱流二次加速モデルによってそのスペクトルを良く再現できる。最終年度には定常を仮定した乱流加速モデルを議論したが、その結果、かなり無理なパラメータを選択せざるを得なかった。従って前年度の結果である、乱流加速には時間発展が本質的であるという結論を強く支持するものとなった。我々は最近起こった強烈なAGNからのフレア現象を我々の時間発展・乱流加速モデルで再現することを試み、見事その極端に硬いスペクトルと短い時間変動を再現することに成功した。これは我々の加速・放射モデルを支持する2例目の印象的な結果となった。さらにこの乱流二次加速をガンマ線バーストにも適用し、そのHardなスペクトルを再現するようなモデルを提案した。これはシンクトロトン放射モデルにおいて、唯一スペクトルを無矛盾に説明できるモデルである。大学院生と協力して、乱流加速モデルをフェルミバブルと呼ばれる、銀河中心のガンマ線を放つ巨大な構造に適用した。過去の銀河中心の活動により、バブル状に乱流領域が広がっていき、そこでの乱流加速を考えることで、フェルミバブルのガンマ線スペクトルと表面輝度を再現することに成功した。ここでも先行研究とは異なり、時間発展の効果が本質的であることが明らかとなった。研究機関全体を通じ、このプロジェクトは大きな成功を収めた。特にAGNからの放射は、従前の衝撃波加速ではなく、乱流による遅い加速が本質的で、その現象全体を理解するためには、時間発展の効果が欠かせないことを明らかにしたことが、最も重要な成果である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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http://www.icrr.u-tokyo.ac.jp/~asanok/publication.html