研究課題
本研究では、近年の太陽系外惑星の発見と原始惑星系円盤観測の進展を背景に、観測と詳細モデルの比較による円盤内ダスト・ガス・化学進化の検証、ひいては系外惑星形成を含めた汎惑星形成論の検証と太陽系内物質の起源解明を目指す。H26年度は(A)乱流粘性による角運動量輸送により進化する円盤ガス面密度の自己相似解が、円盤外縁部において回転不安定であることを見出し、さらに、円盤が高温でかつ中心星の質量が小さい場合において、大型電波干渉計ALMAによるその観測的検証可能性を示した。このような回転不安定性はガス惑星形成に伴うギャップの形成および軌道進化にも重要な影響を及ぼすため、本研究は汎惑星形成論の構築に重要な役割を果たす。(B)原始惑星系円盤表層部において中心星からの輻射圧により高空隙率ダストが円盤外縁に移動する過程を調べた6。近年スターダストミッションにより彗星内に結晶化ケイ酸塩が見つかっており、円盤内縁で高温化に晒されたダストが円盤外縁の彗星形成領域に運ばれた可能性が示唆されている。本研究では、ダストが高空隙であれば、十分な量のダストが輻射圧により円盤外縁に運ばれる可能性を示した。(C)ALMAによりHerbig Be星HD100546周囲のガスとダストの分布を観測した。その結果、円盤外縁においてダスト放射はガス放射に比べて十分に小さく、赤道面付近においてダストが中心星方向に落下している可能性を示した。またダスト進化のシミュレーションと観測を比較した結果、円盤外縁におけるダスト分布の構造が、惑星/伴星の存在により説明可能であることを示した。(D)若い星団中で近傍の大質量星からの紫外線照射影響下にある原始惑星系円盤中の有機分子生成過程を調べた結果、孤立系に比べ、蒸発温度の低い分子の生成率が著しく減少することが示された。今後太陽系内の彗星中の有機分子と比較し、太陽系形成環境に制限を与える。
2: おおむね順調に進展している
H26年度は、彗星内の結晶化ケイ酸塩に関するダスト・プロセッシングの研究と、円盤回転不安定性の観測的検証や有機分子生成など、若い星団内の円盤物理・化学進化に関する研究が進んだ。光蒸発の輻射流体シミュレーションに関しては予定よりも遅れが生じている。
原始惑星系円盤内の複雑な有機分子生成に関する研究を進め、一方で、円盤からのガス輝線のALMA観測によるガス散逸、スノーラインや原始惑星形成の検証法を確立する。また、円盤内ダストの偏光観測による円盤内ダストと磁場の検証法を確立する。遅れが乗じている光蒸発の輻射流体シミュレーションに関しては、シミュレーション以外の手法を用い、円盤ガス散逸や化学進化、ダスト進化への影響を調べるなどの対策を講じる。
原始惑星系円盤内のダスト表面反応による有機分子生成に関する研究に進展があったため研究会を開催し、研究者の招へいに必要な費用を前倒し請求した。しかし当初招へいを予定していた研究者が研究会に来られなくなったため、前倒しした研究費をそのまま次年度使用額とした。
当初の予定通り、研究成果発表旅費等に使用する。
(2)は現在作成途中で以下のwebページに存在http://test.applicats.co.jp/01/tokyo-kougyo_u/~nomura/research.html
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 7件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (20件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
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巻: 799 ページ: 119(9pp)
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http://www.geo.titech.ac.jp/lab/nomura/research.html
http://exoplanets.astron.s.u-tokyo.ac.jp/jpn/column/006.html