研究課題/領域番号 |
25400232
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
町田 正博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10402786)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 星形成 / 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / 磁気流体 / ジェット / アウトフロー / 分子雲 |
研究概要 |
星は分子雲コアが重力収縮して誕生する。また、観測から星形成過程ではアウトフローやジェットという放出現象が確認されている。さらに惑星形成の母体であると考えられる星周円盤も多数観測されている。星形成過程を理解するには、星形成領域で観測される個々の現象を解明し、それらの現象を空間的・時間的に繋ぎ合わせて星が誕生するまでのシナリオを構築する必要がある。しかし、星が誕生している現場は濃いガス雲中であり直接観測することが出来ない。そのため、数値シミュレーションを用いた研究が必要となる。2013年度の研究では、近年星・円盤形成の問題とされているMagnetic Braking Catastrophe(磁気制動問題)を解決するために、高解像度で星周円盤形成のシミュレーションを行った。この問題は、分子雲中で円盤を形成する角運動量が磁気制動という磁場の効果によって過剰に輸送されてしまい円盤が出来ないという問題である。実際に円盤は観測されているのでこの理論予想は観測と矛盾する。我々はこの問題に取り組むために、先行研究を同じ条件で計算を行い、先行研究に示された通り円盤が出来ないことを確認した。その後、高解像度で同様の計算を行い円盤が形成することを確認した。その結果、収縮するガス雲中で出来るファーストコアという天体を空間解像することが円盤形成の計算では必要であることが分かった。これは、ファーストコア中で磁場が効率的に散逸するために磁気制動の効率が落ちるためである。この研究において、我々は磁気制動問題を解決することが出来た。また、この研究内容を天文学会、または、当該分野の複数の研究会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
星形成シナリオを完成するためには、分子雲コアから星、円盤、惑星の形成過程を理解する必要がある。しかし、分子雲コアと原始星の空間スケールは大きく異なる。また、星形成過程で起きる様々な現象の時間スケールも大きく異なる。そのため、着目する空間スケール、または時間スケールでの現象を個々に解明しつつ、それらを繋ぎ合わせて全体像を理解することが必要になる。 2013年の研究では、星周円盤(原始惑星系円盤)の形成に着目して、円盤の形成に必要な条件と初期の円盤進化を解明した。また、円盤から駆動するアウトフローと星形成率についての研究も行った。星周円盤はその後の惑星形成の母体であるため、その形成と進化を理解することは星形成後期段階の進化と密接に関係している。 この研究によって期間内に円盤の形成と円盤中での惑星形成過程を解明する予定である。現在、円盤形成まで解明できたために、おおよそ全体の1/3から半分程度は進展したと考える。そのため、「おおむね順調に進呈している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように星形成過程を解明するためには、様々な星形成過程での現象を解明しつつ全体を理解する必要がある。2013年度の研究では、ある程度大きなスケールである星周円盤を計算するために、比較的粗い空間精度でのシミュレーションを実行した。そのため、中心星近傍のスモールスケールから駆動する原始星ジェットは空間解像していない。 原始星ジェットは、星形成領域で頻繁に観測されており、星形成過程で普遍的に現れる現象だと考えられている。また、分子雲コアのある割合のガスを星の重力圏から放出させるために原始星の最終質量の決定に重要な役割を果たす。 今後の計画ではこのジェットを解像して原始星近傍の進化を調べることを目的とする。しかし、ジェットが駆動する高密度領域、特に原始星内部の高密度領域を空間分解すると計算のタイムステップが極端に短くなるために長時間計算をすることが困難になる。そのため、ガスの状態方程式を人為的に固くして原始星をモデル化するという手法を用いる。この手法は我々の以前の初代星形成の計算で取り入れられたものであり、それを現在の星形成過程にも適用する。 この手法により中心星内部を解像することは出来ないが、原始星のすぐ外側のジェット駆動領域は空間的に解像できる。従来、このような計算では、ジェットの伝播を原始星形成後約10年計算するのがせいぜいであったが、この手法により100-1000年の計算が可能であると考えられる。 ジェット自体は1万年程度駆動し続けると考えられているために、まだ時間積分が十分ではないが、以前の研究よりははるかに長時間計算が出来るために、ジェットの進化の理解が進むと考えられる。また、同時に円盤中での惑星形成過程も調べていく予定である。
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