星は宇宙の最も基本的な構成要素である。また、星は宇宙の力学的、化学的進化を支配している。さらに、星の誕生の過程で惑星が誕生する。そのため、星の形成過程を理解する事は重要である。星は様々な質量で誕生することが分かっている。現在の宇宙、または我々の銀河での典型的な誕生時の星の質量は太陽の半分程度である。しかし、星の質量は太陽の1/10程度から100倍以上のものまで様々である。小質量星は、星全体の過半数を占めるため銀河の力学的な進化に影響を及ぼす。また、小質量星の周囲で惑星も多数発見されている。他方、太陽質量の数倍を超える大質量星は少数であるが、自身が発する強力な輻射によって周囲の環境に多大な影響を与える。そのため、小質量星のみならず、大質量星の形成や進化を理解することも重要である。 小質量星の形成過程については我々の以前の研究によって解明されてきた。しかし、大質量星の形成については、その数が少ないことと、太陽近傍に大質量星が少ないために観測が困難なことによってあまり理解されていない。 この研究では、大質量星の形成についての研究を行った。大質量星が形成する条件は、星形成の母体である分子雲コアが大質量であることと、その星形成コアが重力的に不安定であり原始星誕生後、星、または星周円盤への質量降着率が大きいことだと考えられている。この研究では、大質量でかつ重力的に不安定な分子雲コアを初期条件として数値計算を行い大質量星の形成についての研究を行った。また、シミュレーションの結果の妥当性を検討するため、観測された大質量星からのアウトフローとシミュレーション中に駆動したアウトフローを比較した。結果、観測とシミュレーションはよく一致していることが分かった。我々の結果は、大質量星も小質量星と同じく分子雲コアの崩壊で誕生することを示唆している。
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