研究課題/領域番号 |
25400233
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研究機関 | 北海学園大学 |
研究代表者 |
藤本 正行 北海学園大学, 工学部, 研究員 (00111708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 恒星進化 / 漸近巨星分枝星 / 核種合成過程 / s-過程元素合成 / 物質混合 / 恒星の回転 / 質量放出 / 炭素星 |
研究実績の概要 |
前年度の成果を受けて、① 金属欠乏星の観測を主たる対象としてs-過程元素の理論的研究、② 恒星の進化に伴う慣性能率の評価を基礎とした回転星の進化の追究を軸として進めた。 s-過程元素合成については、昨年度、金属欠乏星では、炭素過多を示すものの中で、s-過程元素の過多を示すもの(CEMP-s)とそうでないもの(CEMP-no)があり、それらの形成の起源が、連星系での質量の異なり、中性子源の異なるAGB星でs-過程元素合成と質量輸送によって説明できることを明らかにしてきた。今年度は、それに加えて、炭素過多星の中には、超新星爆発に起源をもつ r-process の過多を示すもの(CEMP-r)、r-過程元素とs-過程元素が混在するもの(CEMP-r/s)が存在するが、Komiya et al. (2014) によるr-元素の形成過程の研究の成果を取り入れて、その起源が CEMP-no とCEMP-s と同様の枠組みで解釈できること示すことができた。現在この新たな成果を取り入れて、論文を改訂中である。 また、回転星の進化に関しては、球対称の構造の解析に基づいて、回転の進化を構成し、進化の過程で表面が臨界回転に到達し、遠心力により赤道からの質量の放出に至るために恒星が持つべき角運動量の条件とその質量依存性を求めることができた。これに基づく、HR図上での臨界回転星が出現する領域を決めることができ、decretion disk を持つBe 星やB[e] 星との観測との比較が可能となった。その結果、これらの恒星の内部はほぼ一様回転していなければならないこと、したがって、そのために必要な効率的な角運動量輸送の機構が存在しているとの結論を得た。これは、恒星内部の回転則についてこれらの点を含めて、論文を加筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
金属欠乏下での炭素星過多星については、当初の対象であった、s-過程元素のかたの有無で区別されるCEMP-s とCEMO-no 星に以外にも、r-過程元素を含むCEMP-rとCEMP-r/s の別種のグループが存在し、それらの起源についても、さまざま議論されてきたが、本研究では、これらの炭素星を包括する形で、形成過程について、AGB 星を含む連星系シナリオに基づいた統一的な解釈の可能性を切り開けたのは、当初の目標を上回るものである。 また、本研究では、Be星やB[e]星の観測との比較から、恒星の内部がほぼ一様に回転していることを導いたが、これは、これまでの日震学、星震学がきわめて回転速度の遅い恒星しか扱えなかったに対し、Be星やB[e]星など臨界回転に近い高速回転星についてその内部の回転側についての知見が得たのは、本研究が初めてである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、恒星内部における物質混合過程と質量放出の効率の評価が主たる課題である。 CEMP 星に関しては、s-過程元素合成過程の理論的な考察からその形成機構を議論できたが、物質混合の効率については、理論的な導出は難しく、今後は、観測された炭素およびs-過程元素の組成の観測との比較から、物質混合過程の効率を決める方向で解析を進めていくことになる。 同様に、恒星の回転についても、これまでは、角運動量輸送について議論してきたが、それに伴う乱流による物質混合についても、理論的な解析は不可能であり、物質混合の結果と考えられる表面組成の観測と比較からその効率を求めていくことになる。 質量放出に関しては、質量放出を取り入れた進化計算から導かれる回転の進化と、Be星、B[e]星の観測との比較に基づいて議論していく。
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