研究課題
基盤研究(C)
X線観測を用いた銀河団の質量測定に関して、宇宙論的大規模数値シミュレーションを用いた研究を行った結果、静水圧平衡の式において従来無視されていたガスの加速度項が20-30%程度もの系統誤差を引き起こす可能性があることを新たに見出したので、その成果を査読論文として発表した。続いて、この効果も含めたさまざまな系統誤差を取り除いて銀河団の質量測定を行うための手法を、宇宙論的大規模数値シミュレーションを用いて検討した。また、X線衛星すざくにより取得された衝突銀河団 Abell 2163 の広帯域スペクトルデータから、有意な硬X線放射を検出することに成功したので、その成果も査読論文として発表した。我々の得た結果によって、この銀河団に2億度を超える極めて高温の熱的ガスが付随することを裏づけられた一方で、従来予想されていた非熱的ガスの量は少ないことが示唆され、銀河団内の平均磁場強度に対する厳しい下限が得られた。この研究は、次世代X線衛星ASTRO-Hによるさらに高感度の硬X線観測に対する先鞭をつけたものと位置づけられる。さらに、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAを用いた遠方銀河団 RX J1347.5-1145のスニヤエフ‐ゼルドヴィッチ効果観測の詳細な計画を作成し、観測提案を行ったところ、厳しい競争を経て採択され、近い将来に観測が実行される見込みとなった。我々の知る限り、これはALMAによるスニヤエフ‐ゼルドヴィッチ効果の初観測となる予定である。
2: おおむね順調に進展している
研究成果を査読論文として発表するとともに、最新の装置を用いた観測提案も採択され、今後実施される見通しであるため。
昨年度に得た成果をさらに発展させつつ研究を進めることを計画している。特に、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAによって採択された観測提案については、観測が実施され次第、データ解析に着手する予定である。
平成25年度は、実際に旅費として必要となった額(海外航空券代含む)が当初の申請額を上回っため、ワークステーションの購入を見送り、東邦大学に既に設置されている計算機を用いて研究を実施した。平成26年度は、研究打ち合わせおよび成果発表として、2回の海外渡航(フランス、韓国)が予定されているので、その旅費などに使用する予定である。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Astronomy & Astrophysics
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The Astrophysical Journal
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