研究実績の概要 |
平成28年4月に運用を停止したX線天文衛星「ひとみ」が事故前に取得していた希少な観測データから可能な限りの科学的情報を引き出すための系統的な解析と考察を行い、その結果を論文として出版した。主な成果としては、1)ペルセウス座銀河団中心部における高温電離ガスの運動速度が、100~200 km/s 程度の値でほぼ一様に空間分布していることを初めて明らかにしたこと、2)同領域において、ヘリウム型鉄イオンによる輝線が共鳴散乱を受けていることを明確に示したこと、3)同領域における重元素組成比が、太陽近傍と整合することを初めて明らかしたこと、4)同領域のガスに対して、衝突電離平衡からの有意なずれは認められないことを示したこと、5)ペルセウス座銀河団中心に存在する活動銀河核において、蛍光鉄輝線の放射が、ブラックホールから約5000光年以内の領域から生じていることを示したこと、6)これらの成果に対する検出器由来の系統誤差、および既存のプラズマモデルに起因する不定性などを系統的に明らかにしたこと、などが挙げられる。これらは、マイクロカロリメータを用いた高分解能X線分光観測が、銀河団や活動銀河核の強力な研究手段となることを実証したものといえる。 また、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計ALMAによる観測データを用いて、計4つの重力レンズ銀河団方向における輝線放射天体探査を行い、赤方偏移0.3, 0.7, 1.2, 6 における CO(3-2), CO(4-3), CO(5-4), [CⅡ] 放射天体の光度関数にそれぞれ制限を導いた。
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